京大ら,ワイル強磁性体の新しいスピン機能を開拓

京都大学とニュージーランドVictoria University of Wellingtonは,ワイル強磁性体において,スピン流と電流の間に巨大変換効率が実現できることを発見した(ニュースリリース)。

ワイル物質を始めとするトポロジカル物質の中では,エネルギー散逸のないスピン情報伝播が理論的に可能であるため,そのスピン情報を効率的に取り扱うための技術開発が急がれている。

研究グループではワイル物質であり,かつ磁石の性質を持つワイル強磁性体に着目。ワイル強磁性体は,磁石の性質を持つがゆえにスピン情報を 出すことができるだけでなく,ワイル物質特有のトポロジカルな効果である電子状態の捻じれゆえに,スピン角運動量の流れであるスピン流を高効率に電流に変換することが予想される。

スピン流は電流と異なり保存される流れではないため,ある一定の距離で情報が消えてしまうこと,電流計などのように直接測定する手法がないことから別の物理量 (今の場合は電流)に一度変換しないといけない。

そのため,高効率なスピン流=電流変換はトポロジカル物質のスピントロニクス応用に極めて重要となる。ワイル強磁性体はスピン情報を「出す」ことと「観測する」ことの両方に用いることのできる有力な候補材料となる。

ワイル強磁性体としては一般に,ホイスラー合金と呼ばれる金属合金が適していることがわかっていたため,ワイル強磁性体としてCo2MnGaを用いた。このCo2MnGa電極で作り出したスピン流を銅 (Cu)ワイヤを介してもう1つのCo2MnGa電極に注入したところ,強磁性体としては世界最高のスピン流=電流変換効率(−19%,符号は電流の流れる向きを表す)を示すことがわかった。

この効率は現在知られているすべての材料における変換効率と比較しても最高レベルにあり,これに勝る変換効率を示しているのはタングステン(W)の−33%のみ。このような高い変換効率が実現した背景には,ワイル物質であるCo2MnGaが持つ電子状態の捻じれが生み出す物質内部の「有効磁場」と呼ばれる仮想的な磁場が寄与していると考えられるという。

研究グループは,今後Wを超える変換効率を有するトポロジカル物質の開発を目指す。また,スピン流を効率的に生み出すと同時に効率的に計測することを生かしたオールワイル物質からなる超低消費エネルギー情報伝播 ・演算システムの創出が期待できるとしている。

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