NTT,光の損失が極少のオプトメカニカル素子

日本電信電話(NTT)は,微小な機械振動子の内部に希土類元素の発光中心を埋め込むことにより,光のエネルギー損失が極めて少ないオプトメカニカル素子を実現した(ニュースリリース)。

半導体チップ上に作られる微小な機械振動子は,振動子固有の周波数で共鳴する機械共振特性を利用した高感度センサや高周波フィルタなど様々な素子応用に用いられている。

このうち,機械振動子を電気的に検出・制御できる素子はMEMSとして広く知られているが,近年では,光を用いて機械振動子を検出・制御することが可能なオプトメカニカル素子にも注目が集まっている。

オプトメカニカル素子の多くは,光を鏡や空孔などで空間的に閉じ込める光共振器構造や,光が選択的に吸収される光共鳴構造を機械振動子へ組み込んだ構成をとっており,機械振動と相互作用する光共鳴を用いて高感度な振動検出や高精度な振動制御を可能とすることを特徴としている。

このようなオプトメカニカル素子では,光と機械振動の間のエネルギー損失時間の関係によって素子の振る舞いが決まる。具体的には,エネルギー損失時間の短い物理系によって損失時間の長い物理系を制御することが可能となる。

従来のオプトメカニカル素子では、光の損失時間が機械振動の損失時間よりも圧倒的に短いため,光を用いた機械振動の制御は可能だったが,その逆の機械振動を用いた光の制御は困難だった。今回,光のエネルギー損失時間が極めて長い希土類元素の発光中心を機械振動子へ埋め込むことで,機械振動と光の間のエネルギー損失時間の関係性が逆転した新しいオプトメカニカル素子を世界で初めて実現した。

実験に用いた機械振動子は希土類元素エルビウムを含むYSO結晶を斜めからイオンビームで削る微細加工により作製した。これを圧電アクチュエータの上に設置することにより電気的に上下振動を誘起し,機械振動子を固有周波数で共振させることが可能となる。この共振により,機械振動子内部に局所的な歪を導入することができる。

今回,この歪に依存した光吸収・発光の様子を測定できる実験系を構築することにより,希土類元素の発光中心と機械振動とが相互作用した状態を観測することに成功した。また,エネルギー損失時間の測定により,光の損失時間が機械振動の損失時間を上回った状態が実現していることを確認した。

これにより,従来困難であった機械振動を用いた光の増幅や発振が可能となるという。研究グループは,今後,光の増幅と発振現象の実証と,増幅された光を効率よく取り出せるよう素子構造の最適化にも取り組み,弾性波や音波を組み合わせた省エネ光デバイスの創出をめざすとしている。

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