東工大ら,応力で変色し強度を増す高分子を開発

東京工業大学,相模中央化学研究所,山形大学は,力を受けると,色彩変化と蛍光発光によってその力を可視化すると同時に,材料自身が高強度化する高分子材料を開発した(ニュースリリース)。

研究では,引張や圧縮などの力を加えることで色彩変化と蛍光発光を示し,同時に新たな結合ネットワークを形成できる高分子材料の開発を目指した。そうした材料は,どこにどれだけの力が加えられているのかを目視で確認でき,同時に材料自身が化学反応を誘起することで強度が高まる。

今回,研究グループは,高分子材料を構成する分子骨格のうち,力を受けると反応活性なラジカルを生じるジフルオレニルスクシノニトリル(DFSN)骨格に着目した。DFSN骨格は室温では安定だが,力を加えると中央の炭素-炭素結合が開裂し,桃色の炭素中心ラジカルを生成する。

このラジカルは,ビニルモノマーに対する重合開始能を持つため,高分子鎖に連結されたビニルモノマー骨格が共存する系では,分子鎖同士を連結する架橋反応を誘起できる。研究グループは,DFSNによって色彩変化による力を可視化し,同時に架橋反応を起こして高強度化する新たな高分子材料を設計できると考えた。

実際に,主鎖にDFSN骨格,側鎖に重合性基を有するポリウレタンを設計・合成し,フィルム成形を行ない,得られたエラストマーの一部を金属型で圧縮したところ,圧縮した部分のみ桃色に変化し,さらにあらゆる溶媒に対し不溶化した。これは一部のDFSN骨格が解離し,発生したラジカルを開始点とする架橋反応が進行したためだという。

次に,圧縮したフィルムに紫外光(365nm)を照射すると,黄色蛍光を示した。この蛍光発光は,架橋反応中のラジカルが移動することで発生する蛍光性のラジカルが原因。蛍光の変化は,色変化と比較して感度が高いことから,損傷検知の観点からもより有用であると考えられる。

このエラストマーでは,圧縮するほど弾性率が増加するという力学物性の変化も確認された。これは材料が圧縮によって新たな化学結合を形成し,高強度化されるということを示す。

さらに,発生したラジカル種を電子スピン共鳴(ESR)測定とシミュレーションにより推定し,一連のラジカル反応をDFT計算により評価することで,分子レベルのメカニズムを議論できることを示した。

高分子材料が過剰な力の負荷のような好ましくない状況に対して材料自身が対応できれば,予期しない破壊を防ぐことができる。研究グループは今後,この新たな材料設計アプローチがどの程度の汎用性をもつかを検証し,実用材料への展開を目指すとしている。

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