学習院大ら,ろ過膜内の生体分子運動を動画観測

学習院大学と旭化成メディカルは,ウイルス除去フィルターを構成するろ過膜内の生体分子の運動ダイナミクスを,ライブ映像として動的に画像化することに成功した(ニュースリリース)。

旭化成メディカルの「Planova」(プラノバ)は,世界初の中空糸膜から成るウイルス除去フィルターとして上市され,血漿分画製剤の精製など,今日まで世界の医薬品メーカーにおいて広く使われ続けている。

しかしながら,生物学的製剤のようなタンパク質がろ過膜を透過しながらも,ウイルスだけが膜によって巧みに除去される仕組みは完全に理解されていなかった。

研究グループは,蛍光性物質で標識したウイルス様粒子(感染性を持たないウイルスの外殻)を含む溶液を,ウイルス除去フィルターを構成する中空糸状の膜一本に流し込んだ。この膜の断面を共焦点顕微鏡で画像化したところ,膜が光る様子が観察された。

これはウイルス様粒子が膜に捉えられた様子が,光学顕微鏡でダイレクトに確認できたことを意味する。プラノバの中空糸膜は再生セルロースで作られており完全な透明では無いが,その中の微弱な信号を定量的に捉えることができた。

研究グループは次にタンパク質の可視化に取り組んだ。タンパク質はウイルスに比べ,直径では4~5倍,体積で100倍近く小さいが,蛍光標識によってウイルスと同じように検出に成功した。膜の内側に表れたタンパク質が淀みなく膜を通過し,膜の外側に移動する様子を世界で初めて,微小空間のライブ映像として捉えた。

最後に,膜の網目構造に捕捉される瞬間のウイルスの動きの検出に取り組んだ。研究グループは,複数の金属プレートによって中空糸を潰さないように支持する方法を編み出し,中空糸膜の中の生体分子の分布を一万分の一ミリの精度で観察できる容器を用意した。

その結果,ウイルス様粒子が膜に捉えられる瞬間を,世界で初めて動的に可視化することに成功した。ウイルスの位置を示す分布のピークは,少しずつ膜の中で移動するとともに,移動の速度は時間と共に急激に減少し,最後には停止した。

これは膜構造の密な場所に,ウイルス様粒子は完全に捉えられ,プラノバのろ過膜としての堅牢な性質を示すものだという。さらに動きの様子から,膜構造と溶液の流れに起因するウイルス捕捉の過程を定式化する事にも成功した。

研究グループは今後,装置をさらに先鋭化することにより,たった一個のウイルスを観察することを目指す。こうしたアプローチは,ウイルス検出の新しい基盤技術や新規デバイス設計へと発展する可能性があるとしている。

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