岐阜大学,ソフトバンク,情報通信研究機構(NICT),露トムスク大学,露トムスク工科大学は,Beyond 5G/6Gを見据え,300GHz帯テラヘルツ無線で動作する超小型アンテナを使用した通信実験に成功した(ニュースリリース)。
5Gで用いられる準ミリ波帯よりも周波数が1桁高い300GHz帯無線通信には,大きな伝搬損失を補うために高利得アンテナの開発が重要となる。
例えば,kiosk端末から50cm程度離れたスマートフォンに300GHz帯無線通信でデータをダウンロードする場合,一般的なスマートフォンに搭載されているレンズと同程度のアンテナ開口面積(3mm2)以下で14dBi程度以上のアンテナ利得が望まれるが,アンテナ利得とアンテナ開口面積はおよそ比例関係にあり,アンテナの小型化と高利得化の両立が課題となっている。
研究グループは,昨年開発したフォトニックジェット効果による小型アンテナ(Dielectric cuboid antenna:DCA)を用いて,600mmという小区間で17.5Gb/sの通信実験に成功した。伝送実験で用いた小型アンテナの開口面積は1.8mm2(1.36mm×1.36mm×1.72mm),利得はおよそ15dBiだった。
試験で用いた送受信機は市販の部品のみで構成した。伝送速度17.5Gb/sは試験に用いた計測機器により制限されており,開発したアンテナから伝送された信号スペクトル形状を測定したところ,狭窄化などのスペクトル形状の劣化は見られず,開発したアンテナが高速無線通信に適用可能な広帯域性を有していることを確認した。
さらに,送受信機間の距離を変えながら,ビット誤り率(BER)を計測したところ,伝送距離およそ600mm以下において,一般的に伝送成功の目安となるFEC limt(BER=3.8×10-3)以下のBERを確認したという。
300GHz帯で動作する高感度・小型受信機や高出力アンプの研究開発が世界的に急速に進展しており,無線信号の波長と同サイズの小型アンテナの実現によって,テラヘルツ無線で動作する小型集積回路への実装が可能となり,Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信などの実用化に貢献するとしている。