NICTら,マルチモードファイバで1Pb/s伝送

著者: sugi

情報通信研究機構(NICT)は,米NOKIA Bell Labs(ベル研),伊Prysmian Groupと共同で,シングルコア・15モード光ファイバを用い,世界で初めて1Pb/s超伝送実験に成功した(ニュースリリース)。

マルチモード光ファイバは,マルチコア光ファイバと比較して,信号収容密度が高く製造技術が容易で,高密度大容量伝送が期待できる。

しかし,モード数が多くなるとモード多重伝送用の合波器/分波器が巨大化し,受信側ではモード分離後の信号品質が劣化,さらに速度差を補正する処理が増大する問題があった。そのため,モード数が多い大容量伝送の研究は進んでいなかった。

今回は,Prysmianのシングルコア・15モード光ファイバ,NICTの広帯域波長多重技術及びベル研の多重反射位相板によるモード合波器/分波器を利用し, NICTが伝送システムを構築し,合計1.01Pb/s光信号の23km伝送に成功した。マルチモード光ファイバで1Pb/sを超えるのは世界で初めてで,これまでの世界記録の約2.5倍になる。

モード数が増えると,モード分離とMIMO処理の負荷が課題となっていたが,今回,遅延時間を最適化設計した15モード光ファイバと多重反射位相板による小型・低損失・高精度のモード合波器/分波器を用いることで,15というモード数の多さでもモード分離後の信号品質を保ち,広帯域にわたるMIMO処理を実現した。その結果,広帯域382波長,偏波多重64QAM信号のモード分離に成功し,大容量伝送が可能になった。

信号収容密度が高く製造技術が容易であるシングルコア・マルチモード光ファイバを用いた大容量伝送の成功により,将来の高密度マルチモード伝送技術の高度化が期待できるという。

研究グループは,今後,大容量マルチモード伝送の長距離化や,マルチコア技術との融合の可能性を追求し,将来の大容量光伝送技術の基盤を確立していきたいとしている。

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