大阪大学,米カリフォルニア大学,スイス ジュネーブ大学らは共同で,陸上植物の葉緑体タンパク質輸送装置に極めて似た分子装置が,植物の進化的起源とされる緑藻でも必須の役割を担っていることを世界で初めて明らかにした(ニューリリース)。
植物や藻類が光合成を営むのに必須な細胞内小器官オルガネラである葉緑体は,3千種類もの異なるタンパク質が葉緑体へ運ばれることで,その機能を果たすことができる。
この葉緑体タンパク質の輸送に関わる分子装置(葉緑体タンパク質輸送チャネルと輸送モーター)は,植物では大阪大学の研究グループによって明らかにされていたが,その進化的起源については不明だった。
今回研究グループは,陸上植物で見出した葉緑体形成に不可欠の分子装置が,植物の直接の進化的起源とされる緑藻の段階で既に確立され必須な役割を担っている事を発見した。今回,多国間国際共同研究チームによって,緑藻の葉緑体タンパク質輸送機構の全容解明が可能となり,今回の発見に繋がったという。
現存する光合成真核生物は,一部の例外を除いてほぼすべてが,10億年以上前に成立したシアノバクテリアの内共生に由来する葉緑体を獲得した共通の祖先を起源とすると考えられている。
陸上植物は緑藻から進化したとされ,緑藻と陸上植物を合わせて,緑色植物(界)と総称されることから,今回の成果は,地球上に葉緑体が誕生し緑色の藻類や植物へと進化を遂げる過程の解明に一歩近づく発見だという。
また,葉緑体の仕組みを一部利用して,本来葉緑体が行なわない代謝系を導入し,例えば有用生理活性物質等の大量生産に結びつけようとする研究分野である葉緑体工学への,緑藻を用いた応用も期待されるとしている。