東北大,THzを制御するメタマテリアルを開発

東北大学は,メタマテリアルの電磁誘起透明化現象を微小機械で自在に制御する技術を開発し,電圧でテラヘルツ波の透過率や位相を制御することができるチューナブル・フィルターを実現した(ニュースリリース)。

5Gの次の世代「6G」を見据えた研究開発が始まっており,テラヘルツ波が使用されることが明示されている。調整可能なテラヘルツ波用フィルターは大型・高価なものが多く,小型・安価かつ高度なテラヘルツ波制御が可能なチューナブル・フィルターの実現が課題だった。

メタマテリアルは,超微細構造体で構成される人工光学物質で,これまでの電磁波操作技術の限界を打ち破る革新的な人工構造体として注目されている。研究では,メタマテリアル構造を微小機械で可変させることで,6Gに向けた新たなチューナブル・テラヘルツ波制御技術の開発に成功した。

このフィルターのメタマテリアル単位構造は,可動梁上に形成された1本の金属棒構造と,それに直角な2本の平行金属棒構造が固定梁上に形成された構造で構成される。金属には金が使われており,このメタマテリアル単位構造が2次元配列されている。

静電気で駆動するMEMSアクチュエータに電圧を印可することで,静電引力によって可動梁上の金属棒が移動して固定梁上の平行金属棒に近づくため,共振周波数付近でのテラヘルツ波の透過率,位相が大幅に変わり,印可電圧を精密に調整することで,テラヘルツ波の特性を制御できる。

また,メタマテリアル直下の基板が取り除かれているため,従来技術の問題であった基板の影響による透過率の低下や不要な干渉波形の発生を解消し,透明性の向上と不要な干渉波形の除去を実現したという。

実験では周波数1.832THzのテラヘルツ波に対して,印可電圧に応じて透過率を38.8%の変調範囲で変えることに成功し,位相を25.3~47.8°の範囲で制御可能なことを示した。

このフィルターはMEMS製造技術を用いて作られるため小型・量産性に優れ,電子回路や半導体と組み合わせてテラヘルツ波の高度な制御が可能になる。これらの利点を活かし,6Gの通信技術をはじめ,医療・バイオ・農業・食品・環境・セキュリティなど幅広い分野での応用が期待される。

また,電磁誘起透明化メタマテリルはスローライトやストップライトを作り出すことができる特有なメタマテリアルとして注目されており,電磁誘起透明化現象を動的に制御できる今回の技術は,量子コンピューターや光LSIを実現するための光メモリや光バッファとしての応用も期待されるとしている。

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