第36回櫻井健二郎氏記念賞の受賞者が決定

光産業技術振興協会は,「第36回櫻井健二郎氏記念賞」の受賞者を発表した。

この賞は,元電子技術総合研究所 電波電子部長,元同協会理事の故櫻井健二郎氏が光産業の発展に尽くした多大なる功績をたたえるとともに,光産業及び光技術の振興を図ることを目的として創設したもので,光産業技術の分野において先導的役割を果たした業績に対して表彰するもの。

今回,個人受賞として,桐蔭横浜大学 医用工学部 臨床工学科 特任教授の宮坂力氏,グループでの受賞として,豊田中央研究所の大島正氏と加藤元氏およびトヨタ自動車の杉山夏樹氏と青山宏典氏がそれぞれ受賞となった。

このうち宮坂氏は「有機無機ペロブスカイト太陽電池の先駆的研究」での受賞となった。宮坂氏は2009年に臭化鉛およびヨウ化鉛系ペロブスカイト結晶が優れた発電層として機能することを見出し,有機無機ペロブスカイト太陽電池を世界に先駆けて開発した。さらに,この成果に立脚して単結晶シリコン太陽電池に迫る変換効率を達成するとともに,ペロブスカイト太陽電池の研究開発を牽引し,この分野の研究開発が広がることに貢献した。

またペロブスカイト材料は,作製法が比較的簡便であり,安価・大量生産の可能性を有するとともに,材料の安定性向上ならびに鉛を用いない材料系の開発も広く進展しているため,今後,持続可能社会を構築するための太陽電池材料の1つとして発展が大いに期待されることも評価された。

大島氏らのグループは,「半導体レーザ加工によるエンジン用金属積層造形バルブシートの実現」での受賞となった。同グループは,自動車用エンジンバルブを着座させるリング状の部品であるバルブシートの製造に,高出力半導体レーザーによる金属積層造形技術を世界で初めて適用することにより,耐摩耗性や耐熱性はもとより,吸気ポートの設計自由度を著しく向上し,国内のみならず広く海外生産をも可能にし,本格的な実用化に貢献した。

この技術の開発には,レーザークラッドバルブシートの原型を開発した当時に用いていたCO2レーザーを半導体レーザーに置き換えることにより,加工システムを小型・高効率化したこと,及びこの加工システムに最適なクラッド用合金粉末を開発できたことなどが大きく寄与している。光造形法は3次元加工の有力な手段として注目を集めているが,その製造物が基幹産業での厳しい使用環境の下,実フィールドで稼働していることが高く評価された。

表彰式は12月9日(水),東京ビッグサイト会議棟の605-606会議室にて開催される「2020年度光産業技術シンポジウム」終了後,16:20から同所にて執り行なわれる予定。

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