大阪大学の研究グループは,レーザーパルスの強度面整形と非回折光を組み合わせることで,自由空間内での直線飛行光弾丸を理論的に生成し,その速度と加速度を自由に制御することに成功した(ニュースリリース)。
時空間の三次元光ソリトンは「光の弾丸」と呼ばれ,多くの新しい性質を持ち,幅広い応用が可能。アインシュタインの相対性理論の原理によれば,光の速度は一定であり,光の速度を超えることはできないが,光パルスの群速度を制御することはできる。
従来の光パルスの群速度を制御するためには,超低温原子,高温原子蒸気,刺激ブリルアン散乱,能動利得共鳴,トンネル接合,メタマテリアル,フォトニック結晶など,いくつかの特殊な条件が必要。また,共鳴から遠い波長の透明材料が必要であることや,自由空間であっても,制御性が非常に限られていることが課題だった。
研究グループは,レーザーパルスの強度面整形(位相面は変更されない)と非回折光を組み合わせることで,自由空間内での直線飛行光弾丸を理論的に生成し,超光速,低光速,加速,減速のすべての場合を含めて,その速度と加速度を自由に制御することに成功した。光弾丸の速度や加速度の制御性が高いことから,速度や加速度に合わせたマイクロマニピュレーション,顕微鏡観察,粒子加速,放射線発生などの特定の用途が可能になるという。
光の速度を制御することは,物理学の研究では古くからホットで難しいテーマだった。この研究では,時空間結合(強度面整形)によりレーザー光弾丸群速度を任意に制御することが可能であることを示した。これはアインシュタインの相対性理論の原理に反するものではないとする。
この方法では,速度が可変の3次元レーザー光弾丸を生成し,「時間分解不変」から「時間分解可変」へと光と物質の相互作用に関する研究の幅を広げることに繋がる。例えば,レーザー光弾丸で加速された電子を用いた実験では,レーザー光弾丸の飛行速度を制御できれば,レーザー光弾丸で発生する電磁場と飛行中の電子を完全に一致させることができるため,電子の加速効率を大幅に向上させることができるという。
また,生物学的な高解像度超高速イメージングの分野では,検出用レーザー光弾丸の飛行速度を制御することによって,画期的なブレークスルーにつながることも期待されるとしている。