慶大,透明率90%の透明ホヤ幼生を発見

著者: sugi

慶應義塾大学は,可視光の約90%が生体を透過する,驚くほど透明なホヤ幼生を見出した(ニュースリリース)。

多くの海洋生物は非常に透明であることが知られている。生物の透明性は,一般的に捕食者からの回避や獲物に気づかれずに近づくことなどの生態学的利点をもたらす反面,保護色素の欠如により環境紫外線などの有害な光に対する脆弱性を引き起こす。

そのため生物の透明性は環境的要因および生態学的要因によって影響を受け,多様化する可能性がある。しかしながら,生物の透明性が特定の種内でどのように進化したのかはよく知られていない。

研究グループは,ハイパースペクトルカメラを使用して,21個体からの199個の卵における波長(400~760nm)の可視光範囲の平均透過率を生体透明度と定義し算出した。種同定の結果,21個体はナツメボヤ科,ユウレイボヤ科,マボヤ科,およびシロボヤ科の4科13種に属することが判明した。また,系統解析の結果からホヤの卵の透明度は,異なる科で独立して進化した可能性が示唆された。

上位6つの最も透明な卵のうち4つはすべてナツメボヤ科に属しており,卵の透明度を高く保つ系統発生的制約が示唆された。卵の生体透明度が孵化後において保たれているかどうかをテストするため,可視光の約90%(窓ガラスと同等の透明度)を透過させる最も透明な卵を持つヨーロッパザラボヤと不透明な卵を持つカタユウレイボヤの両方の卵と幼生の透明度を比較した。

その結果,両種の卵の透過率スペクトルは,それぞれの幼生の透過率と同等だった。自然状態と同等の明視野照明下ではヨーロッパザラボヤ幼生の体は,眼を除き驚くほど透明であり,その一方,偏斜照明の条件下では視認できた。

ホヤ卵の透明性は種間で非常に大きなばらつきがあり,それは捕食回避や紫外線への脆弱性,また生殖様式や生育環境といった生存戦略などに密接な関わりを持つと考えられ,生態学的・進化発生生物学(eco-evo-devo)的に興味深い形質を持つ。

研究で示されたバラエティに富むホヤ卵の透明度は,卵や幼生を取り巻く周囲の環境において,さまざまな発生学的・生態学的要因が影響した結果,透明度が多様化して生じたものと考えられるという。

研究グループは,生物の透明性に関わる研究はまだ数が少ない一方,漁業や医療分野,生物模倣などの技術に多大な影響を与えうる,ブルーオーシャン的な研究領域として非常に魅力的だとしている。

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