理研ら,宇宙最長の「ものさし」実現へ一歩

理化学研究所(理研),ポーランド ヤゲロニアン大学,伊ナポリ大学,メキシコ国立自治大学は,「キロノバと同時発生するガンマ線バースト(GRB)」が宇宙の距離を測る「標準光源」として有効であることを発見した(ニュースリリース)。

「ガンマ線バースト(GRB)」は突発的に大量のガンマ線が降り注ぐ,宇宙で最も明るい天体現象。そのエネルギーは非常に強力であり,数秒間で太陽が一生の間に放出するのと同量のエネルギーを放出する。そのため,GRBは地球から最大110億光年離れたIa型超新星の標準光源よりもはるかに遠くで観測されている。

もし,新しいタイプの標準光源としてGRBを使用できれば,人類は宇宙を測定する最長の”ものさし”を手に入れることになり,遠方宇宙のより正確な観測はもちろん,宇宙そのものの進化を理解するのに大きく役立つと期待されている。

これまでに研究グループは,183個のGRBの解析から,「X線残光プラトーフェーズの継続時間」「X線残光プラトーフェーズ終了時のX線光度」「即時放射中のガンマ線光度」を3軸に取った3次元物理空間に,GRBの物理量をプロットしていくと,データが一つの平面に集まるという法則を明らかにし,その平面を「GRBの基本平面」と名付けた。この法則を用いると,絶対光度を求めることができるため,GRBを宇宙の距離を測る”ものさし”として使用できると考えられていた。

また,「キロノバ」と呼ばれる突発的な天体現象が知られており,これは二つの超高密度天体(例えば二つの中性子星)が合体した後の爆発により生じ,その際には短期間GRBが放出されると考えられていた。実際に2017年8月17日には,連星中性子星合体に伴う重力波と短時間GRB,キロノバがほぼ同時に検出されている。

GRBでは,ガンマ線の放射(即時放射)が消えた後にX線の残光が残る(残光放射)場合がある。この物理学的特徴は,同じ観測衛星で観測されたGRBでも大きく異なるが,GRBの固有のグループによって不変な特徴があれば,それはGRBを標準光源に導く鍵となるという。

今回,研究グループは,372個のGRBのデータを詳しく解析した結果,キロノバと同時発生する短時間GRBは3次元物理空間の短時間GRB基本平面からのずれが小さく,かつ基本平面の下側に分布することが分かった。これは,キロノバと同時発生する短時間GRBが標準光源として優れた性質を持つことを示すもの。

この研究成果は,GRBという人類史上最長の宇宙の距離を測定する”ものさし”が実現可能であることを示すものだとしている。

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