東工大ら,発光現象を示すサブナノ粒子を発見

東京工業大学と分子科学研究所は,2018年に開発した「アトムハイブリッド法」により合成した「サブナノ粒子」を分析し,新たな性質を持つ量子サイズ物質を発見した(ニュースリリース)。

通常のナノ粒子よりもさらに小さな,量子サイズ(約1nm)まで微小化された「サブナノ粒子」は,その多様な機能性から研究が盛んに行なわれている。

一般的なナノ粒子とは異なり,サブナノ粒子はわずか数個~数十個の原子で構成されており,その性質は原子の数や元素の比率によって大きく変化する。しかし,サブナノ粒子の合成には原子レベルの精密制御技術が要求され,特に複数の元素が混ざり合ったサブナノ粒子の合成は極めて困難とされていた。

研究グループは,独自に開発したサブナノ粒子の新しい精密合成法「アトムハイブリッド法」を応用して,実際に合成したサブナノ粒子を分析することで,この極小のサイズ領域で起こる新たな現象の発見を目指している。今回の研究では,二種類の金属元素(インジウムとスズ)を含むセラミック微粒子である酸化物サブナノ粒子に着目し,粒子中の元素比率を連続的に制御する方法でサブナノ粒子を合成した。

そのうえで,特異的性質を持つ新奇サブナノ粒子を探索した結果,二種類の元素がある特定の比率になるとき,粒子内部のインジウム原子やスズ原子が通常よりも多くの電子を持つ「異常な電子状態」を発現することを発見した。この現象は,バルク(塊状物質)やナノ粒子では見られず,物質のサイズを極限まで縮小し,かつ二種類の元素を適切に混合することによって初めて観測されるという。

また今回,異常な電子状態のインジウムを含むサブナノ粒子が,特殊な発光現象を示すことも明らかにした。このような電子状態は,一般的に空気や水などに対して不安定であるため,発光現象は短時間で消失してしまう。しかし今回得られたサブナノ粒子では,この電子状態は非常に安定しており,半年以上外気に晒されても発光機能が失われなかった。

新奇サブナノ粒子の網羅的探索と詳細な分析に成功した結果,量子サイズ領域の新しい現象を発見し,その原理を解明することができた。今回用いた量子サイズ物質の「スクリーニング手法」は,今後もこの未開拓分野の学理構築に大きく貢献することが期待されるとする。

また,今回発見された,特定の元素比率で生じる特殊な現象を利用すると,通常は不安定で得ることが難しい電子状態を安定して作り出すことができるという。将来的には,特殊な電子状態を利用した次世代機能材料の創出に繋がる可能性があるとしている。

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