10月27日,板橋区立グリーンホールにて,「第7回板橋オプトフォーラム(IOF)」が開催された。これは光学と精密機器分野における研究者・技術者の団体が一堂に会する催しで,フォーラムの開催を通じて,組織を超えた連携の強化・拡大につなげていこうというもの。
板橋区では戦前から双眼鏡の製造を中心に多くの光学系企業が集積し,戦後はこれらの企業がカメラや測量機,医療機器の製造へと発展してきた「光学の街」としての一面を持つ。
今回のIOFも例年通り板橋区がハブとなり,歴史的に強みを持つ光学・精密機器産業のネットワークを区内外に拡げ,新たな価値を生み出していくことを期待して,日本光学会光設計研究グループ/宇都宮大学オプティクス教育研究センター/理化学研究所大森素形材研究室との合同開催となった。
一時は新型コロナの影響で開催も危ぶまれていたが,会場での感染対策を徹底すると共に,今回は講演のWeb中継や展示企業を紹介するWeb展示会も併設。こうした対応によりいままでよりも広い範囲の参加者を募ることが可能となった。
基調講演では「面発光レーザーの発明と発展:みんなが持ってるVCSEL!」と題して,東京工業大学/名誉教授・元学長 伊賀健一氏が自宅からオンラインで登壇し,Web上だけでなく,コロナ対策で席の間隔を大きくあけた現地会場でも多くの参加者がスクリーンを見守った。また,講演後の質疑応答では,会場とオンラインの双方から意見が交換される,現地とWebのハイブリッドセミナーならではの光景も見られた。
他にも,理化学研究所大森素材光学研究所は「第46回&第47回 マイクロファブリケーション研究の最新動向」,日本光学会 光設計グループは「第69回研究会『バイオイメージングの最前線』」,そして宇都宮大学オプティクス教育研究センターは「オプティクス基礎講座」を開催し,熱心に意見を交換する様子が見られた。
また展示会場では,板橋区内外の光学関連企業がブースを設置し,製品の展示会を行なった。現地での展示会の開催が減っている現在,多くの出展社にとって久しぶりのリアル展示会となったこともあり,例年より来場者は少なかったながらも貴重な機会となったようだ。
会場で目を引いたのが有我工業所のレーザー照明。均一な強度を持つ光を正方形に照射するもので,カラーフィルター等の検査用途に適しているという。同社ではレーザー以外にもランプやLEDを光源とした照明装置のノウハウがあるほか,多岐にわたる波長にも対応する。また,金属3Dプリンターの出力サービスも請け負っていることから,大パワーのレーザー照明などで必須となるチラーも,複雑な中空水管構造を持つものを作製できるという。
日本特殊光学樹脂は200nm~3μmにおいて95%の透過率を持つUV-SWIR樹脂によるフレネルレンズを展示した。コロナ対策に深紫外LEDが注目を集めているが,この波長域は樹脂を劣化させるが,同社はこの製品につて15年の屋外暴露実験で性能が変わらないことを確認しており,製品の薄型化に貢献しそうだ。
また,赤外域では2μm~3μmに対応するゲルマニウムの単結晶レンズも紹介した。こちらは切削によるフレネルレンズとなっており,検査や監視用赤外照明などに期待できそうだ。
展示会終了後,会場では「第3回IOF Award企業展示奨励賞」の表彰が行なわれた。今回受賞となったのは,興和光学,ルケオ,システムズエンジニアリングの3社で,板橋区長の坂本健氏より賞状が贈られた。なお,オンライン展示会は引き続きこちらで行なわれている。