東北大学と東京大学は,緑内障に対する新規治療薬の開発へ向けて,網膜の細胞死に関与するタンパク質であるカルパインの生体内イメージングシステムを開発した(ニュースリリース)。
緑内障は,網膜神経節細胞が障害されて視野が狭くなる疾患。40歳以上の緑内障有病率は5.0%とされ,失明原因第1位の疾患となっている。
緑内障の治療として,手術や投薬による眼圧下降が有効だが<眼圧下降のみでは治療効果が十分に得られず,病状が進行する場合も少なくない。研究グループは,緑内障治療に対する新たなターゲットとして,網膜神経節細胞死を誘導するカルパインというタンパク質に着目してきた。
しかしながら,様々な要因が影響している緑内障において,カルパインがどのように関与するのか十分に明らかとなっていない。そこで,生体における網膜神経節細胞のカルパイン活性の評価手法として,新たな生体内イメージングシステムを開発した。
研究グループは,カルパイン活性検出蛍光プローブとして Acetyl-L-leucyl-L-methioninehydroxymethyl rhodamine green(Ac-LM-HMRG)を開発した。
まず,このAc-LM-HMRGを薬剤(NMDA)誘導緑内障ラットモデルの眼球に注射し,臨床で使用されている共焦点走査型ダイオードレーザー検眼鏡で眼内を撮影した。つぎに,網膜神経節細胞において,薬剤誘導網膜障害によって誘導されたカルパイン活性を,蛍光として観察し,その細胞数を定量的に計測できることを確認した。
また,このカルパインが活性化して蛍光上昇した網膜細胞の数が,カルパイン阻害薬を使用することで大幅に減少することも計測できた。これらにより,Ac-LM-HMRGを用いた生体内イメージングはカルパイン阻害薬の適応や治療効果を判定するためのコンパニオン診断薬としての有用性が示唆された。
研究グループは,この研究によって生体内カルパイン活性の評価が可能となったことで,神経保護治療の開発に役立つことに期待されるとしている。