阪大ら,早期乳癌のテラヘルツイメージングに成功

大阪大学と仏ボルドー大学は,レーザー光を非線形光学結晶に照射した際に局所的に発生するテラヘルツ波を利用して,病理診断でも識別が難しいとされる,わずか0.5mm未満の早期乳癌を,染色を行なわずに高い精度でテラヘルツイメージングすることに初めて成功した(ニュースリリース)。

テラヘルツ波を利用した乳癌組織のイメージングは,癌組織と正常組織を,染色を行なわずに識別できることから,次世代のオンサイト診断技術としての応用が期待されている。

しかし,テラヘルツ波の波長が光に比べて数百倍長いため,その回折限界の影響から,比較的小さな早期の乳癌である非浸潤性乳管癌(=DCIS)を識別することが困難だった。また,DCISは,染色による病理診断でも,病巣そのものの見た目が進行した癌(=浸潤性乳管癌(IDC))と似ていることから識別が難しいとされている。

今回,研究グループは,レーザーを非線形光学結晶に照射した際に局所的に発生するテラヘルツ波光源と癌組織を直接相互作用させてイメージングを行なう独自のイメージング技術を開発した。

ここで発生するテラヘルツ波は,その波長(約0.3mm)より数桁小さい点光源として扱うことができる。これとサンプルを直接相互作用させてイメージングを行なうことで,従来難しかった,0.5mm未満のDCISの鮮明なテラヘルツイメージングに初めて成功した。

このDCISとその周辺にあるIDCでは,テラヘルツ波の強度が異なっていることを観測し,それらを定量的に識別できる可能性を示唆した。これらの成果は,これまでのテラヘルツ波を使った癌計測と比較して1,000倍近く高い精度で評価できていることを示しており,この手法によってのみ明らかになった知見だとする。

今回の成果は,染色せずに迅速かつ高精度な癌の病理診断を提供するオンサイト診断実現に向けた大きな1歩だとする。また,乳癌のみならず様々な種類の癌の早期発見や癌のグレードの判定など機械学習と組み合わせることで,病理診断を強力にサポートできることが期待されるという。

さらに,この技術を応用した新しいテラヘルツ診断デバイスの開発にも期待でき,バイオ・医療分野を中心に幅広い波及効果が見込まれるとしている。

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