東芝は,2020年度第4四半期より,国内外での量子暗号通信システムのプラットフォームの提供およびシステムインテグレーション事業を順次開始する(ニュースリリース)。
国内事業では,東芝デジタルソリューションズが情報通信研究機構より実運用環境下における複数拠点間の量子暗号通信実証事業を受注した。2020年度第4四半期に量子暗号通信システムを納入し,2021年4月に実証事業を開始する予定。同社は,これまで量子暗号通信の様々な実証実験を進めてきたが,量子暗号通信システムインテグレーション事業としては今回が日本で初めての案件となるという。
海外事業では,英国政府研究開発機関において量子暗号通信を実用化する,BT Group plc.との共同実証試験を9月16日から開始している。また,米国ではQuantum Xchangeと共にVerizon Communications Inc.が9月3日に公表した量子暗号通信トライアルに参加している。さらに2021年度以降,英国,米国の他に,欧州,アジアの主要国でも現地事業パートナーとともに量子暗号通信システム事業を推進する予定。
量子暗号通信事業を推進するため,同社は2種類の量子鍵配送プラットフォームを開発している。1つはデータ通信用光ファイバーを共有する「多重化用途向け」プラットフォーム,もう1つは鍵配送の速度と距離を最大化した「長距離用途向け」プラットフォーム。
同社は今後,国内外で量子鍵配送ネットワークを構築し,金融機関を中心とした顧客向け量子鍵配送サービスを2025年度までに本格的に開始し,量子鍵配送サービスをいち早く提供することで,2035年度に全世界で約200億米ドル(約2.1兆円)と見込まれる量子鍵配送サービス市場の約1/4(2030年度で約30億米ドル,約3,150億円)を獲得し,量子暗号通信業界のリーディングカンパニーを目指すとしている。