NTTら,世界最速の直接変調レーザーを開発

著者: sugi

日本電信電話(NTT)と東京工業大学は,高熱伝導率を持つSiC基板上にインジウムリン系化合物半導体を用いたメンブレンレーザーを開発した(ニュースリリース)。

データセンターでは現在,低消費電力・低コストな直接変調レーザーが多く使用されているが,変調速度に制限があり,90年代にレーザー活性層の高性能化により30GHz程度の3dB帯域が得られて以降,大きな進展はない。

これに対し,フォトン-フォトン共鳴が注目されている。レーザーの発振モードに隣接する縦モードとの離調(ディチューニング)を強度変調時に発生する側帯波の周波数に一致させることにより,その特定の変調周波数付近での強度変調を増強させるもので,これまでに3dB帯域55GHzと,112Gb/sのPAM4信号の生成が実現されている。

さらなる高速化に向け,フォトン-フォトン共鳴の周波数を大きくするには低周波領域から高周波領域にわたる周波数応答特性が平坦であることが必要となる。NTTでは,活性層の光閉じ込め係数に注目し,熱酸化膜(SiO2)付きシリコン(Si)基板上にメンブレンレーザーの開発を行なってきた。

このレーザーは活性層の光閉じ込め係数が大きく小型で,低消費電力な直接変調レーザーが実現できる。一方で,熱伝導率の小さなSiO2上に素子を作製していることから,電流量を増やしても活性層の利得の飽和により緩和振動周波数は20GHz程度で飽和していた。

今回,活性層での発熱を抑えることを目的にSiO2の約500倍の高い熱伝導率をもつ炭化ケイ素(SiC)基板上にインジウム燐(InP)系メンブレンレーザーを作製した。SiCはInPと比較して屈折率も小さく,光閉じ込め係数もSiO2上の素子とほぼ同等。

素子作製は,極薄膜(40nm)のSiO2を間に挟む直接接合を用いた。100mWの発熱源では,活性層長50μmのメンブレンレーザーの活性層の温度上昇は,SiO2膜厚を2μmから40nmにした場合,130.9度から16.8度になることがわかった。作製した素子では,緩和振動数が最大値となる電流値はSiO2上の素子では5.5mAだったのが30mAとなり,世界最高の緩和振動周波数42GHzと3dB帯域60GHzを得た。

フォトン-フォトン共鳴が95GHz付近で起こるような素子を設計したところ,3dB帯域108GHzを得るとともに,256Gb/s(2560億bit)のPAM4信号の生成,および2km伝送に成功した。

これにより,伝送容量が1tb/sを超えるような次世代イーサネットの規格に4つあるいは8つのアレイで対応可能な送信機の実現などが期待され,低消費電力化も実現できるとしている。

キーワード:

関連記事

  • ヌヴォトン、来年3月から1.7W紫色半導体レーザーの量産開始 業界最高クラスの出力を実現

    ヌヴォトン テクノロジーは、波長402nm帯で業界最高クラスの光出力を実現した「小型・高出力1.7W 紫色(402nm)半導体レーザー」の量産を開始すると発表した(ニュースリリース)。 業界標準のTO-56 CANパッケ…

    2025.12.01
  • KDDI総研と京大、千歳科技大 宇宙光通信に適した周波数変調型フォトニック結晶レーザーを開発

    京都大学、KDDI総合研究所、公立千歳科学技術大学は、宇宙光通信など長距離自由空間光通信(FSO)への応用を想定し、発振周波数を高効率かつ高速に変調できる「周波数変調型フォトニック結晶レーザー(PCSEL)」を開発した(…

    2025.11.27
  • 【interOpto2025】QDレーザ、レーザー網膜投影技術を展示

    interOpto / 光とレーザーの科学技術フェアで、QDレーザ【ビジョンテクノロジーゾーン No. C-38】は、レーザー網膜投影技術を展示している。 この技術は、レーザー光を用いて目の網膜に直接映像を投影するもの。…

    2025.11.13
  • 京セラ、水中光無線通信で世界最速レベルの伝送容量5.2Gb/sを達成

    京セラは、水中環境における短距離光無線通信において、世界最速レベルとなる5.2Gb/sの伝送を達成した(ニュースリリース)。 近年、AUV(自立型無人潜水機)や水中ドローンを活用した海洋調査、構造物点検、資源探査が急速に…

    2025.11.13
  • フォトニクスのアカデミー賞、SPIEプリズムアワード2026の最終候補者が決定

    国際光学・フォトニクス学会(SPIE)は,2026年Prism Awards(プリズムアワード)の最終候補製品を発表した。 Prism Awardsは「フォトニクスのアカデミー賞」とも称される国際的な表彰制度であり,光学…

    2025.11.07
  • 丸文,レーザーワイヤレス給電システム評価キットの提供開始

    丸文は,Wi-Charge Ltd(Wi-Charge)の赤外線レーザーワイヤレス給電システム「AirCord(エアコード)」の事前検証を目的とした,評価キットの提供を開始した(ニュースリリース)。 倉庫や店舗におけるデ…

    2025.10.31
  • 古河電工,光出力2kWのインフラ構造向けレーザーを開発

    古河電気工業は,鉄道車両や橋梁,船舶などのインフラ構造物向けに,光出力2kWの「インフラレーザ」定置システムを製品化したと発表した。これは,2023年に発売した700W定置システム,2025年5月に発表した1kW可搬型シ…

    2025.10.09
  • NTT,IOWN2.0は光コンピューティングへ

    NTTは10月6日,IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)技術についてメディアや投資家向けに説明する「PR/IR DAY」を開催した。 まず初めに「Toward the…

    2025.10.07

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア