金沢大学,関西学院大学,自然科学研究機構は,NASAの衛星の赤外線観測装置のデータを詳細に解析し,太陽や地球を取り囲む等方的な惑星間塵の存在を明らかにした。また,新たな惑星間塵の成分を考慮することで,遠くの宇宙から飛来する宇宙赤外線背景放射をこれまでより高い精度で測定することに成功した(ニュースリリース)。
私たちが住む太陽系には,小惑星や彗星のかけらである微小な惑星間塵が漂っている。これまでの研究により,黄道面に沿って分布する惑星間塵は確認されていたが,太陽を取り囲む等方的な惑星間塵は謎に包まれていた。
また,天の川銀河の外にある遠い銀河や初期宇宙からの光を合計した宇宙赤外線背景放射は,宇宙進化の歴史を調べるために重要な観測量だが,その前景放射のひとつである等方的な惑星間塵が出す光の強度が明らかになっていなかったため,正確に測定することができていなかった。
研究グループは,太陽系のさまざまな方向を観測したCOBE(Cosmic Background Explorer)衛星の赤外線観測装置DIRBE(Diffuse Infrared Background Experiment)の全天観測データを詳細に解析した結果,太陽を中心として等方的に分布する惑星間塵の検出に初めて成功した。
さらに,この研究で新たに見いだした等方的な惑星間塵を考慮することで,宇宙赤外線背景放射の測定精度を大きく改善した。その結果,これまでの研究で主張されてきたように,天の川銀河の外の遠い宇宙に銀河以外の未知の天体が存在することが改めて検証されたという。
この研究の成果は,太陽系や銀河宇宙の理解を大きく推し進めるもの。等方的な惑星間塵の詳細な構造や,宇宙赤外線背景放射の起源は,いまだ謎に包まれているが,近い将来,ロケットや探査機を利用した新たな観測プロジェクトによってそれらの謎が解き明かされることが期待されるとしている。