大阪有機化学工業は,同社が開発した光配向材料が,有機ELフレキシブルディスプレー(有機ELFD)に用いられる薄型積層フィルムの原材料として採用され,量産・販売を開始したと発表した(ニュースリリース)。
近年,湾曲させることが可能な柔軟性を有したフレキシブルディスプレーの要望が高まっている。このディスプレーを湾曲させるためには,ディスプレイを構成する各部材を柔らかくするだけではなく,薄型化することも重要となる。
有機ELFD用薄型積層フィルムの製造においては,より薄いフィルムを作成するために,従来の延伸製造ではなく,フィルムの原材料を基材に薄く塗布して光照射により硬化させる塗布製造が良いとされてきた。しかし,塗布製造を行なうためには,フィルムを構成する配向膜の配向性が低い事から,これまで実用化迄には至っていなかった。
同社は,兵庫県立大学の川月喜弘教授が開発した光配向技術を導入すると共に,同社のコア技術であるアクリル化技術・高分子合成技術により,高分子液晶型光配向材料を開発した。
開発した材料は,従来の光配向膜と比較して,非常に高い配向力を有しているため,塗布化が困難であった材料をも配向させる事ができ,塗布製造による有機ELFD用薄型積層フィルムの製造が可能となった。
この材料により製造されたフィルムは,その厚みを従来の約50分の1程度にまで薄くする事が可能となり,屈曲耐性の向上や透過率の向上,さらには折り曲げによる光学特性の変化を抑制する事ができるようになるという。
この材料は,その高い配向力を活かすことで,有機ELFD用薄型積層フィルム用途だけでなく,自動車・建材等に用いられる調光フィルムや,AR/VR向けホログラフィック光学素子といった,将来拡大が期待される新規分野への展開が可能だとする。同社では引き続き,この材料の用途開発および性能のさらなる向上を目指していくとしている。