宇宙航空研究開発機構(JAXA)らの研究グループは,暗いリュウグウ表面に非常に明るい岩塊を多数個発見し,光学航法カメラ(ONC)と近赤外分光計(NIRS3)による観測で,この明るい岩塊のうち6つは外来起源物質である可能性が高いことを発見した(ニュースリリース)。
リュウグウは大きな母天体が衝突破壊,破片の再集積という過程を経てラブルパイル小惑星になったと考えられている。これまでの研究結果からリュウグウはとても暗く均質な物質でできていることが示されていた。
しかし,低高度運用からONCを用いて解像度の高い画像を得られるようになると,リュウグウの表面には小さな非常に明るい物質があちらこちらにあることが分かった。研究グループは,この中の大きい岩塊(数10cm以上)についてONCとNIRS3を用いた反射分光を行なった。
ONCの観測から,計測された21個の明るい岩塊のうち,6つは波長1µmあたりに吸収帯をもつ鉱物,すなわち無水の珪酸塩鉱物であることがわかった。リュウグウの多くは含水鉱物であることから,明らかに異なる組成が見つかったことになる。これらをNIRS3でも観測をしたところ,無水鉱物の中でも普通コンドライトと近い特徴を持っていることが明らかになった。
これは,リュウグウの母天体が,無水鉱物からなる他の小惑星と衝突破壊,破片が再集積することを経て現在のような状態になったことが示唆されるという。リュウグウは内側小惑星帯から来たと考えられているが,この小惑星族内では普通コンドライト的なS型小惑星と炭素質コンドライト的なC型小惑星の衝突が頻繁に起こっていたと考えられている。
一方,リュウグウと同じような炭素質コンドライトであるのにも関わらず明るいのは,母天体衝突時の温度上昇もしくは母天体内部の温度分布を反映している可能性もあるという。
「はやぶさ2」はリュウグウから2回のタッチダウンでサンプルした試料を12月に地球に届ける予定となっている。これらの試料の中には微量ながら,明るい岩塊のカケラも混ざっている可能性がある。はやぶさで培われた微小試料分析の技術によって,さらに詳しいリュウグウの歴史が明らかになることが期待できるとしている。