兵県大ら,レーザー照射で電圧上がる素子を発見

著者: sugi

兵庫県立大学,東京理科大学,高輝度光科学研究センターは,マルチフェロイック材料であるBiFeO3にMnを微量添加することで,バルク光起電力効果により発生する電圧が飛躍的に向上することを発見し,また発生電圧向上のメカニズムを解明した(ニュースリリース)。

中心対称性を持たない結晶に光を照射することで発生するバルク光起電力効果は,照射光によるキャリア励起と緩和を繰り返すうちに,バンド構造の非対称性に起因して,キャリアが移動していく「シフト電流」によることが明らかにされ,注目されている。

このバルク光起電力効果は従来のpn接合型太陽電池とは異なるメカニズムで発電することから,従来の太陽電池の変換効率を凌駕する可能性が示唆されているが,太陽電池を実現するためには,光照射により発生する電流および電圧の両方の向上が重要となる。

研究では,バンドギャップが2.5-2.8eVと可視光域にあるマルチフェロイック材料のビスマスフェライト(BiFeO3)に着目し,Mn添加BiFeO3薄膜の260μmの幅に青紫色レーザー光を照射するだけで,Mn0.5at%添加BiFeO3薄膜において852Vに達し,従来のSi太陽電池の発生電圧0.5Vの約1700倍に相当する,バンドギャップを越える電圧の発生を確認した。

また,その電圧は照射光偏光角を回転させることで制御が可能であることもわかった。これらの結果は,BiFeO3のバンドギャップを遥かに超える電圧であり,バルク光起電力効果によるものであることを示している。また,発生電圧の照射光偏光角依存性は理論式と良く一致することもわかった。

次に発生電圧向上のメカニズムを探るため,軟X線光電子分光法,軟X線吸収分光法による価電子帯および伝導帯電子構造を詳しく調べた。その結果,Mnドープ量を増やすことで,エネルギーバンド構造が高エネルギー側へ移動していることが分かった。

また,価電子帯直上には酸素欠損が原因と考えられるエネルギー準位が,Mnドープ量を増やすことで消滅していることが分かり,これは,Mnをドープすることで,酸素欠損が電気的特性におよぼす影響が低減されることを実験的に証明したことになるという。

さらに硬X線光電子分光法により,電子が持つ最大エネルギーであるフェルミ準位がMnをドープすることで低下することを実験的に証明した。これらの結果から,BiFeO3へMnをドープすることで電子構造が変化し,光照射により発生する電圧が飛躍的に向上したことを明らかにした。

研究グループは,今後,バルク光起電力効果によるエネルギー変換効率の向上を試み,新たな光―電気エネルギー変換メカニズムとして確立を目指すとしている。

キーワード:

関連記事

  • 東大,円偏光とバイアス電場で生じる起電力を解明

    東京大学の研究グループは,半導体に円偏光とバイアス電場を同時に与えた時に生じる起電力の正体を調べる実験及び解析手法を開発し,その有効性を理論的に実証した(ニュースリリース)。 通常,半導体に光を照射すると電子と正孔が励起…

    2025.05.21
  • 早大ら,一次元らせんペロブスカイトで巨大光起電力実証

    早稲田大学,東京大学,筑波大学は,ハロゲン化鉛ペロブスカイトの一次元らせん構造および配列を有機キラル分子と結晶成長法により制御する手法を見出し,15Vを超える巨大な光起電力を発現させることに成功した(ニュースリリース)。…

    2025.03.08
  • 東大ら,原子層強誘電材料でバルク光起電力発電実証

    東京大学,京都大学,物質・材料研究機構は,2次元層状物質である硫化錫(SnS)において中心対称性を持たないSnSを成長させ,そのバルク光起電力効果による発電を実証した(ニュースリリース)。 従来の強誘電材料において中心対…

    2023.06.08
  • 香川大,強誘電性液晶のバルク光起電力効果を発見

    香川大学の研究グループは,拡張π電子系を導入した強誘電性液晶のバルク光起電力効果を世界に先駆けて発見した(ニュースリリース)。 研究グループは,拡張π電子共役系を組み込んだ強誘電性液晶が,半導体的な電荷輸送性を示す一方で…

    2023.04.04
  • 東大ら,歪ませた層状結晶に巨大な光起電力を発見

    東京大学と理化学研究所は,正三角形の対称性を持つファンデルワールス結晶である二硫化モリブデン(MoS2)を歪ませることで,面内に電気分極とそれを反映した巨大な光起電力効果が生じることを発見した(ニュースリリース)。 ファ…

    2022.11.25
  • 東大ら,2次元結晶に構造由来の光起電力効果発見

    東京大学,理化学研究所,加The University of British Columbia,物質・材料研究機構は,積層方向に分極を持つような2次元結晶において,電気分極を反映した巨大な光起電力効果が生じることを発見し…

    2022.05.30
  • 立命大,軽くて柔らかい光発電デバイスを開発

    立命館大学の研究グループは、ピエゾフォトトロニクス効果(圧電-半導体-光励起の相乗効果)を用いて「曲げると起電力が変化する軽くて柔らかい光発電デバイス」の開発に成功した(ニュースリリース)。 結晶セレンは,可視光波長の光…

    2022.05.25
  • 香川大,開放電圧が大幅に向上する光起電力を発表

    香川大学の研究グループは,強誘電性と半導体としての性質を兼ね備えた液晶性強誘電半導体の光起電力効果についての新しい成果を発表した(ニュースリリース)。 既存の太陽電池では,p-n接合やショットキー接合界面での局所的な内部…

    2021.12.01

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア