東工大,有害元素フリーの高効率青色発光体を開発

東京工業大学は,有害元素を含まないハロゲン系青色発光体を新たに開発した(ニュースリリース)。

蛍光体は波長変換によってさまざまな色を作り出す。蛍光体で最も重要になるのが波長変換の効率であり,発光効率(PLQY)がその指標とされる。近年,PLQYが90%を超えるさまざまな高効率発光体が報告されているが,カドミウムや鉛のような有害元素を含むことが問題となっている。

研究では,新たなハロゲン化物発光体を見出すために,複合アニオン化合物に着目した。イオン半径が大きく異なるヨウ素イオン(I-)と塩素イオン(Cl-)からなる複合アニオン化合物を選択し,これらを許容する新しい相があるかを調査した。その結果、Cs5Cu3Cl6I2という新たな相の存在が確認された。

Cs5Cu3Cl6I2の光特性や大気安定性を調べると,発光波長は460nmであり,既存のCs3Cu2I5よりやや長波長側にシフトしていることがわかった。発光効率は95%と,これまでに報告されたハロゲン系青色発光体の中では最も高い値となった。

一方,大気安定性の試験でも良好な結果が得られた。Cs5Cu3Cl6I2は大気中に90日間放置しても劣化はみらない。塩化物発光体では大気中での劣化が数多く報告されているにもかかわらず,塩素がアニオンの75%を占めるCs5Cu3Cl6I2が,Cs3Cu2Cl5よりもかなり優れた大気安定性を示すことは注目に値するという。

Cs5Cu3Cl6I2とCsCu2I3は同じ1次元性材料に分類することができるが,PLQYでは,Cs5Cu3Cl6I2が95%,CsCu2I3が10%と顕著な差がみられる。この差の理由は,価電子帯上端の局在性,つまり正孔の有効質量の違いによるものであるという。銅を含むハロゲン系発光体のほとんどでは,発光は自己束縛励起子から生じる。この自己束縛励起子の生成には,正孔が空間的に局在されていることが望ましい。

また,Cs5Cu3Cl6I2の伝導帯下端には比較的大きなバンド分散がみられる。よって,価電子帯上端に生成した局在した正孔と,伝導帯下端の遍歴性の高い電子によって,発光効率の高い自己束縛励起子が効率よく生成されることが,Cs5Cu3Cl6I2での高いPLQYにつながっていると考えられるという。

また,溶液法を用いたバルク合成や,塗布法により薄膜作製が可能であるため,プラスチック基板を用いるフレキシブルディスプレーなどへの応用が期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • ソニーなど3機関、必要な場所のみを照らす青色VCSEL照明装置を出展【OPIE2026】

    ソニーセミコンダクターソリューションズ、大阪大学レーザー科学研究所、岩崎電気はOPIE2026に出展している可視光・赤外半導体レーザー応用コンソーシアムのブースにおいて、『青色面発光レーザー(VCSEL)を用いた位置分割…

    2026.04.22
  • 追手門学院大, 緑色の光を放つ新たな蛍光体を作製

    追手門学院大学の研究グループは,体の奥深くや機械の内部などの温度を正確に測ることができる蛍光温度計の実現に向けYb3+(イッテルビウム)とTb3+(テルビウム)という元素を,LaF3(フッ化ランタン)とLaOF(酸化フッ…

    2025.10.06
  • コニカミノルタ,フレキシブルLEDビジョンを製品化

    コニカミノルタとコニカミノルタプラネタリウムは,圧倒的な没入感・臨場感を実現する独自のLEDシステムである「DYNAVISION-LED」のフレキシブルLEDカーブビジョンを,展示やエンタメ等のビジネス領域で本格参入する…

    2025.08.21
  • 【OPK】ライト&イメージ,浮遊映像スイッチを展示

    光技術展示会「光・レーザー関西2025」展示会場で,ライト&イメージ【ブースNo.MA-11】は,「浮遊映像スイッチ」を展示している。 このスイッチは,空中映像と空中センサーを融合した,使いやすい薄型の非接触スイッチ。デ…

    2025.07.17
  • 【OPK】ビーム電子工業,透明スクリーン・チェンジングディスプレーを展示

    光技術展示会「光・レーザー関西2025」展示会場で,ビーム電子工業【ブースNo.MA-14】は,透明スクリーンやチェンジングディスプレーについて展示している。 空中に浮かび上がる映像が,来場者の目を引きつける。独自に開発…

    2025.07.16

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア