東北大ら,水中でできる超分子で光反応制御を達成

東北大学多と仏ボルドー大学は,螺旋型ナノリボン集合体をケイ素化合物でラップしたハイブリッドナノリボン集合体を利用し,水中に光反応の原料を加えるだけで集合体に非常に規則正しく取込まれること,さらに弱い光を当てるだけで,とても早く反応が進行し,Head-to-Head型光二量体を高い選択性で合成できることを明らかにした(ニュースリリース)。

化合物に光を当てることにより生まれる,光反応の鍵となる“励起状態中間体”の寿命は,1億分の1秒から1兆分の1秒くらいと,とても短く,ま
たこの極々短い“励起状態”をコントロールすることは容易ではなく,光を利用して化合物を合成する光反応は,自然への負荷が少ない環境調和型の反応であり有用とされてきたものの,実用化には至っていなかった。

研究グループは,この問題を解決するために化合物と同程度の大きさを持つホストと呼ばれる分子の中で光反応を行なう,超分子光反応,特にタンパク質や核酸,砂糖の仲間など,天然から得られる分子をホスト分子とする合成法を提案し,この方法が光反応のコントロール法として役立つことを報告してきた。

今回の研究では,二鎖型界面活性剤とワインからも採れる酒石酸を一緒に入れ,かき混ぜるだけで自発的に形作られるリボンのような形をしたナノ集合体にケイ素化合物を加えることで,ケイ素化合物でナノリボン集合体の外側をラッピングした(有機-無機)ハイブリッドナノリボン集合体をホスト分子とする超分子光反応に初めてチャレンジした。

研究では,自然への負荷が少ない光を使い,これまで機能分子としての応用が期待されながらも合成が困難であった,立体的にも静電的にも反発の大きい,Head-to-Head型アントラセンカルボン酸二量体を97%以上の選択性で合成に成功した。

この成功は,今回のモデル反応系だけでなく,多くの光反応に応用することが可能だという。研究グループは,環境負荷の少ない合成戦略の一つとして,持続可能社会構築に貢献でき,SDGs推進の観点からも高く評価されるものだとしている。

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