東北大ら,省エネ人工ニューロン素子技術を開発

東北大学とスウェーデン ヨーテボリ大学は,人工知能ハードウェアへの応用が期待されるスピントロニクス技術を用いた人工ニューロン素子の特性を低消費電力で個別に制御できる重要技術を開発した(ニュースリリース)。

スピントルク発振はスピントロニクス関連現象の一つであり,これを利用した“スピントロニクス発振素子”は神経回路におけるニューロンの機能を模擬できることから,人工ニューロン素子としての人工知能ハードウェアへの応用が期待されている。しかしこれまでは,演算を行なう前段階の学習過程で必要となる,ニューロン素子の特性を個別に制御する手法が確立されておらず,応用に向けた課題だった。

今回,研究グループは,ゲート電極が形成された蝶ネクタイ型のスピントロニクス発振素子(人工ニューロン素子)を試作し,素子特性の制御に取り組んだ。この蝶ネクタイ型の素子は以前にヨーテボリ大学のチームによって開発されたもので,2019年12月に64個の素子からなるネットワークを用いて音声認識の原理実証実験に成功したことが報告されている。

また今回作製した発振素子の材料には東北大学が以前に開発していた高品質W/CoFeB/MgO積層構造を用いた。半導体集積回路で広く用いられているゲート電圧制御の手法を適用することで,発振素子の特性(具体的には発振周波数,放出される高周波信号強度,発振周波数スペクトルの線幅,発振に必要な閾値電流など)を広い範囲において高いエネルギー効率で変調できることを確認した。

特にスペクトル線幅を決めるギルバートダンピング定数の実効値は,従来の常識では考えられない大きさである42%も変調されていることが分かり,数値シミュレーションとの比較からこれが特異なエネルギー緩和機構によってもたらされていることが明らかになった。

スピントロニクス発振素子を人工ニューロンとして用いたネットワークは時系列情報の処理を得意とするリザバーコンピューターなどへの応用が有望視されている。今回の成果により,ネットワークの構成要素となるニューロン素子の特性を個別に制御できる手法が確立されたとする。これは,ネットワーク全体が所望の機能を実現するようにニューロン素子を任意にチューニングできることを意味しており,ネットワークの機能性を大幅に高められることが期待されるという。

また,この研究から強磁性ナノ構造におけるエネルギー緩和に関する新たな機構が明らかになった。今後,エネルギー効率に優れた情報処理技術基盤の構築へと発展していくことが期待されるとしている。

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