東北大,環境の温度変化で発電する素子を開発

東北大学の研究グループは,マイクロ加工技術を用いて熱電素子を量産する技術を開発するとともに,周囲の温度変化を利用して発電する熱電システムを試作し,バッテリーレスでのIoTセンサーの動作に成功した(ニュースリリース)。

モノのインターネット(IoT)化が進んだスマート社会では,様々なシーンでセンサーにより取得された情報がサイバー空間で処理され,安全・安心やサービスの向上などに利用されている。しかし,これら多種で膨大な数のセンサーへのエネルギーの供給が課題となっている。

明るい場所であれば,太陽光発電で発電してバッテリーに給電するなどの方法が可能だが,暗所での動作は困難であり,このため熱電発電などの
温度差発電をIoTセンサーに利用するための研究が進められている。しかし,熱電発電では温度差を作り出すために高温熱源を必要とするため,利用できるシーンに限りがあった。

今回の研究では,温度差のみならず,環境の温度変化を利用して発電する常温発電デバイスを提案し,そのプロトタイプでIoTセンサーのバッテリーレス化を実証した。

開発した常温発電デバイスは,熱電発電素子と蓄熱部,および放熱部から構成されている。熱電発電素子は,Bi2Te3とSb2Te3の複数の対からなる熱電素子を量産化が容易なめっきの技術で作製し,Si基板で挟み込んだ構造をしたもの。

熱電発電素子の片面は蓄熱部に接触し,別の片面は放熱部に接している。この常温発電素子に温度差を与えるか,あるいは環境の温度変化を与えたとき,熱が蓄熱部に吸収,あるいは蓄熱部から放熱される。この時,熱電発電素子の両側に温度差が発生して発電する。

原理実証用の常温発電ユニットを建物の内部に設置し,半日の環境温度変化に対する発電量の関係を測定したところ,一日の内,朝や夕方などの大きく温度が変化する際に発電量が大きいことがわかった。発電したエネルギーは蓄電部に蓄え,必要な時にセンサーや演算処理部(CPU),無線ユニットに給電し,センサーで取得した信号を無線で送信することを可能にした。

常温発電のプロトタイプでは,蓄電のためのキャパシタ,温度センサー,CPU,無線ユニットを組み込んでおり,バッテリーを使うことなく,長期間にわたって,温度センサーからのデータを外部に送信することに成功した。

研究グループは,さらに性能を向上させるため,不純物を熱電素子にドーピングすることで発電量を増やす技術なども開発しているという。

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