名大ら,光によるレリーフ構造形成法に新提案

名古屋大学と立教大学理の研究グループは,光に反応しない高分子膜でも表層のみの分子膜の光反応で,フォトパターン通りに膜全体が大きく動き,表面レリーフ構造ができる現象を見出した(ニュースリリース)。

1995年にアゾベンゼン高分子膜表面にレーザー干渉光を照射することで,平滑な膜から物質の移動が起こり,表面レリーフが形成される現象が発表された。一方,研究グループでは2000年にアゾベンゼン液晶高分子膜を使うことで,2~3ケタ少ない光量で,高感度で同様な物質移動が起こる現象を発表している。

光物質移動は現象の不思議さに加え,この手法では光照射を行うだけでパターン通りのレリーフ構造が“自然に”できるため,光リソグラフィー法の現像が不要で環境負荷の少ない新たな表面加工法として注目されてきたが,具体的な物質移動の機構については,いまだに明確な説明がなされていない。

研究では,高感度に動く液晶高分子の光物質移動の現象は表面からの作用が重要であると仮定し,光に反応しない液晶高分子膜(膜厚:数100nm)の表面に数nmレベルの光に反応するアゾベンゼン高分子膜をのせて光を当てる実験を行なった。

その結果,これまでの常識に反して,膜内にアゾベンゼンが存在しなくても,表面層の光反応だけで効率的に表面レリーフが形成されることを見出した。表面だけの作用であることから,この液晶高分子系での物質移動は従来ほとんど考慮されなかった表面張力差によるマランゴニ効果(流体の表面張力が場所によって異なる場合,表面張力の小さい部分から大きい部分へと流体が動いて対流がおこる効果)で起こることを明らかにした。

液晶配向では,配向膜と呼ばれる基板表面あるいは空気側表面に存在する僅かな分子層がもつ情報が増幅されて,液晶全体に影響が及ぶ(コマンド表面,液晶ディスプレーの液晶配向制御ではこのプロセスを利用している)。この研究から,レリーフが形成される物質移動現象においても,こうした微量の表面分子層の情報が増幅されるいわゆるコマンド表面現象と捉えることができるという。

アゾベンゼン高分子膜は着色しており,これが応用上の妨げとなってきた。今回の手法では,実質上無色透明な高分子膜の表面に自在にレリーフ構造を作ることができ,特に光学素子を想定した際の応用範囲が大きく広がる。光に反応しない高分子膜素材も光物質移動の対象になることから,可視域に光吸収を持たない透過型回折格子やマイクロレンズアレー等の光学素子の簡便な作製などへの応用が期待されるとしている。

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