東京農工大学は,メタサーフェスを利用して広視域角・高解像度のホログラフィを動画化することに成功した(ニュースリリース)。
光の波面を記録・再生する技術であるホログラフィは,究極の立体ディスプレーとも呼ばれ,将来の立体映像技術として注目されている。ホログラフィの実用化のためには,超高密度の表示用デバイスが必要となる。
光の波長以下の単位構造であるメタアトムを配列したメタサーフェスは,非常に高密度なデバイスであり高画質の投影が可能だが,従来の方法ではフレーム数を2~3程度までにしか増やせず,動画の表示が難しいという問題点があった。
今回,19世紀にリュミエール兄弟が発明した複合映写機(シネマトグラフ)に範を取り,電子線描画装置等を用いて48フレームからなるホログラム列を1枚の基板上に形成した。
各フレームは画素数2048×2048と高解像度で,画素ピッチ300nmによる全半球にわたる広視域角を有するメタサーフェスであり,金の開口をメタアトムとして利用している。この基板を機械的に走査することで,最高再生速度30fpsの動画化に成功した。
研究グループは今後,立体映像の投影や,カラー表示化を進めていく。また長時間の動画記録のためには,記録媒体や製造技術の革新が必要となる。さらに,メタアトム自体に変調機能を持たせることができれば,いわゆる空間光変調器が構成できる。これにより,フィルム映画がプロジェクターに置き換わったように,将来的にはフレーム数の制限を受けない投影が可能となり,全半球観察型立体映像技術の実用化に貢献できると期待している。