沖縄科学技術大学院大学(OIST)は,効率と安定性の高い次世代型太陽電池モジュールを開発した(ニュースリリース)。
次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池は,大きな太陽電池モジュールにすると効率が急激に低下する。また劣化が急速で,寿命が短いという問題がある。
今回研究グループは,2層間にEDTAKと呼ばれる化学物質を追加し,ペロブスカイト活性層と電子輸送層の界面を改善した。すると,EDTAKが酸化スズ電子輸送層とペロブスカイト活性層とが反応するのを防ぎ,太陽電池モジュールの安定性を向上させることを発見した。
また,EDTAK内のカリウムは活性ペロブスカイト層に移動し,ペロブスカイト表面の小さな欠陥を「修復」した。これにより,表面の欠陥が移動中の電子と正孔のトラップを防ぎ,より多くの電気を生成できるようになった。さらにEDTAKは,酸化スズ電子輸送層の導電性を強化するため,ペロブスカイト層から電子が収集されやすくなった。
次にペロブスカイト活性層と正孔輸送層の間の界面に,EAMAと呼ばれるペロブスカイトを追加した。これにより,正孔輸送層が正孔を受け取る能力が向上した。この処理をされたデバイスは,EAMAが結晶粒のモザイクであるペロブスカイト活性層の表面と相互作用したため,湿度と温度のテストでも優れた安定性を示した。
一方,EAMAのないデバイスでは,粒子間の境界に起因するクラックが活性層の表面に形成された。EAMAを加えると,追加のペロブスカイト材料が粒界を満たし,水分の侵入を止め,クラックの形成を防止した。さらにPH3Tと呼ばれる少量のポリマーを混合し,正孔輸送層自体にも変更を加えた。このポリマーは層に撥水特性を与え,耐湿性を高める。
また,ペロブスカイト太陽電池モジュールの上部電極の金の微小粒子は,電極から正孔輸送層を通り活性ペロブスカイト層に移動し,デバイスのパフォーマンスを大きく損っていた。PH3Tポリマーを混合すると,金の粒子はデバイスにゆっくりと移動し,モジュールの寿命が大幅に延びることがわかった。
さらに,ガラス層にポリマーのパリレン薄層を追加することで,太陽電池モジュールに保護コーティングを施した。これにより,2000時間の一定の照明の後でも,初期性能の約86%を維持した。
研究グループは,産業技術総合研究所と改善された太陽電池モジュールをテストして,16.6%の効率を達成した。今回の研究は22.4cm2の太陽電池モジュールで行なったが,より大きな太陽電池モジュールへの応用を目指すとしている。