順大,高精度の光線-電子相関顕微鏡法を開発

順天堂大学の研究グループは,遠赤色蛍光タンパク質を用いた高精度の光線−電子相関顕微鏡法(In-resin CLEM)を開発した(ニュースリリース)。

CLEMは,光学顕微鏡による蛍光像と電子顕微鏡像を相関させて画像を重ね合わせる手法。これまで蛍光観察には緑色蛍光タンパク質などが用いられていたが,電子顕微鏡用試料作成時に蛍光が消失してしまう問題があった。

また,蛍光観察の後に,電子顕微鏡用の化学固定処理・超薄切片調製を行なう過程で生じる化学的・物理的歪みにより,高精度の画像の重ね合わせによる解析が困難だった。

そこで研究グループは,電子顕微鏡用試料作成時に蛍光タンパク質の蛍光を保持することができれば,こうした問題を解決できると考えた。

まず電子顕微鏡の生体試料作製過程で蛍光能が最も消失する生体膜の染色直後に着目し,細胞内で蛍光を保持できる蛍光タンパク質を探し,遠赤色蛍光タンパク質のひとつが蛍光能を保持できることを見出した。

次に,その遠赤色蛍光タンパク質を発現させた細胞に対して電子顕微鏡用の試料処理を行ない,電子顕微鏡観察に使う100nm厚の超薄切片を作製し,蛍光顕微鏡で観察したところ,細胞内に遠赤色の蛍光が観察できた。さらに,同じ超薄切片をそのまま電子顕微鏡でも観察することに成功した。

この手法により,これまで問題となっていた化学的・物理的歪みの問題が解消され,極めて歪みの少ない高精度のCLEM(エポキシ樹脂包埋試料によるIn-resin CLEM)が可能となり,理論上は電子線および蛍光波長による差異のみしか残らない。

実際に遠赤色蛍光タンパク質を細胞小器官それぞれに発現させて,電子顕微鏡用の試料処理を行なった。その結果,蛍光観察で光る部位が,実際にこれらの器官であることを電子顕微鏡像で確認し,電子顕微鏡用試料における細胞小器官の高精度の光線−電子相関顕微鏡法(In-resin CLEM)を世界で初めて成功させた。

遠赤色蛍光タンパク質は生体組織を通過する時の蛍光のロスが少なく,また,100nm厚の超薄切片における蛍光観察が可能となったため,これまでの蛍光顕微鏡のZ軸分解能(通常300〜500nm)を凌駕する解像度が得られ,組織・細胞生物学分野でも大きな進展が期待されるという。

今後,他の波長の蛍光タンパク質によるマルチカラーIn-resin CLEMが可能となれば,多くの組織における細胞間連携の解析のみならず,様々な疾患の異常なタンパク質の局在・超微形態解析まで,幅広い応用が期待されるとしている。

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