岐阜大ら,テラヘルツ無線用小型アンテナを開発

岐阜大学,ソフトバンク,情報通信研究機構(NICT),ロシアNational Research Tomsk State University,ロシアTomsk Polytechnic Universityの研究グループは,300GHz帯テラヘルツ無線(以下「テラヘルツ無線」)で動作する超小型アンテナの開発に成功した(ニュースリリース)。

近年,無線通信の高速化・大容量化の要求によって,100Gb/s以上の伝送速度を実現するBeyond 5G/6G技術に関する研究開発が世界的に開始されつつある。テラヘルツ無線は,5Gで利用されるミリ波帯と比べて,より広い周波数帯域が利用可能なため,超高速無線システムの候補として期待されている。

一方で,テラヘルツ無線の周波数は伝搬損失が大きく,実用化するには利得の高いアンテナの開発が必須となる。アンテナの寸法を大きくすることで利得は向上するが,スマートフォンなどへの実装を考えると,小型で利得の高いアンテナの開発が必要不可欠であり,サイズと利得の両立が課題とされていた。

今回研究グループは,無線信号波長(約1mm)と同程度の大きさの直方体型誘電材料を使用することで発生するフォトニックジェット効果に着目し,小型アンテナの開発に応用した。開発したアンテナは,利得を約15dBi(シミュレーション値)と大きく保ったまま,無線信号波長と同程度の1.36mm×1.36mm×1.72mmというサイズ(開口面積:1.8mm2)を実現した。

これは,同程度のアンテナ利得のホーンアンテナと比較して体積がおよそ40%程度にまで小型化されることに相当する。同寸法のホーンアンテナと比較した場合は,3dBビーム幅(FWHM)がE面で80%程度,H面で70%程度に狭窄化されたことに相当するという。

アンテナの開発に加えて,現在開発が進められているテラヘルツ無線に対応するトランシーバーの出力パワーと受信感度の性能が向上することで,テラヘルツ無線通信技術の実用可能性が広がるとする。

研究グループは今後,テラヘルツ無線伝送システムに超小型アンテナを適用して,無線送受信機の実現可能性を調査する。無線信号波長と同サイズの小型化アンテナの実現によって,テラヘルツ無線で動作する集積回路への実装を可能にし,Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信などの実用化に貢献するとしている。

その他関連ニュース

  • 名大ら,テラヘルツ波⇒スピン流への変換機構を実証 2024年12月19日
  • 京大ら,THzで超高速スピンスイッチング動作を発見 2024年10月28日
  • ローム,業界最小テラヘルツ発振・検出デバイス発売 2024年09月30日
  • 理研,手のひらサイズで10W超のテラヘルツ光源開発
    理研,手のひらサイズで10W超のテラヘルツ光源開発 2024年09月09日
  • 阪大ら,偏波制御で小型デバイスのTHz通信容量倍増
    阪大ら,偏波制御で小型デバイスのTHz通信容量倍増 2024年08月30日
  • 芝浦工大ら,サブテラヘルツ波でコンクリートを透視 2024年08月08日
  • 農工大ら,鋭い指向性のテラヘルツ円偏波を発生 2024年08月06日
  • NTT,グラフェンプラズモン波束を発生/制御/計測 2024年07月26日