沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,材料の縁(エッジ)における曲率を変化させることで,どのようにしわを増やしたり減らしたりできるかを示した(ニュースリリース)。
しわは,圧力センサー,航空機パネル,さらには,軽量宇宙船の構造である展開形のブームや望遠鏡などに悪影響を及ぼす可能性がある一方,材料に有用な特性を与えられる可能性も示されている。たとえば,材料を超疎水性にしたり,独自の方法で光を反射するコーティングする時にしわを利用できる。だが,しわが発生する原因となる物理的要因はいまだ完全には理解されていない。
研究グループはナノ結晶ダイヤモンドフィルムの小さな領域の下にあるガラスの層を取り除き,”ダイヤモンドウィンドウ”を作製していた。このとき,ダイヤモンドフィルムからダイヤモンドウィンドウを製造するときにしわの発生が避けられないことを認めた。
ナノ結晶ダイヤモンドフィルムをガラス基材の上で成長させるプロセスで,基板の加熱と冷却が行なわれると,2つの層が異なる量の膨張と収縮をし,応力が発生する。次に,レーザーと酸を使用してガラス基材に穴を開けると,残留応力により,基材の穴の上に張られている状態のナノ結晶ダイヤモンドフィルムが変形し,縁の周辺にしわが寄る。
このことが,しわができる物理的原因の一部を理解する機会であることに気づいた研究グループは,直径と境界の曲率がしわに与える影響を実験的に示すため,円形のダイヤモンドウィンドウを使用し,観察した現象を説明する簡単な理論モデルも開発した。
研究グループは,異なるサイズのダイヤモンドウィンドウを作製し,ウインドウ部分に張られたフィルムの湾曲した縁の周辺に形成されたしわの波長と数を測定した。
すると,ダイヤモンドウィンドウのサイズが大きくなる,すなわち結合して支えられているナノ結晶ダイヤモンドフィルムの境界の曲率が小さくなると,しわの密度は減少し,しわそれぞれの波長が長くなっていることを発見した。
研究ではさらに,ダイヤモンドウィンドウ全体のひずみレベルを測定した。従来の方法での2D材料全体のひずみ測定は複雑で費用もかかるが,ダイヤモンドウィンドウの表面の各部分の高さを決定する手法を考案し,アルゴリズムも開発した。
こうした実験結果を使用し,理論モデルを開発した。この理論モデルでは,機能的なしわや,しわの少ないデバイスの設計に使用できるという。モデルは実験にも利用し,負の曲率を含むデバイスでは,しわがさらに減少することもわかったとしている。