東大ら,動く分子を世界最速動画撮影

東京大学,米バージニア工科大学,九州大学の研究グループは,分子の動きを原子分解能電顕でその場撮影し,1つの分子があたかも古典的物体のように往復運動をする様子を1600枚/秒という世界最速のビデオ映像として記録することに成功した(ニュースリリース)。

動く分子の動画撮影の速度は,これまで20枚/秒程度が限度であり,それは高速原子間力顕微鏡(AFM)で達成された。その空間分解能は,タンパク質分子が塊として見える程度。一方,透過電子顕微鏡(電顕)で撮影された分子の動画では12枚/秒がこれまでの最高速度だった。

分子運動や化学反応をはじめとする分子の振る舞いはカオス現象であり,直接分子の動きを追跡する実験的研究が困難だったため,確率論的事象として取り扱われてきた。

研究グループでは2007年以来,「原子分解能単分子実時間電子顕微鏡 (SMART-EM)法」と呼ばれる分子電子顕微鏡技術の開発に取り組み,小さな分子一つ一つ,さらには単分子のみならず分子集合体の動きを動画撮影して記録する研究を行なってきた。

高速でSMART-EM動画を撮影する場合,単に高速のカメラを用いるだけではフレームレートが高くなるにつれてフレームあたりの電子線量が減少し,画像のノイズに埋もれて分子画像が見えなくなる。

そこで研究グループは,動画圧縮技術の一種であるChambolle total variationノイズ除去法を用い各画像のノイズを低減することでこの問題を解決し,従来の最高速度を100倍も上回る1600枚/秒の一枚画像で分子の像を捉えることに成功した。

さらに動画内の隣接するフレームを重ね合わることで画質を向上し,多数のフレームに収められた分子像について統計解析することにより,分子の位置についても0.01nm,1万分の9秒という極めて高い位置および時間精度で決定した。

これにより,これまで利用できなかった空間時間精度での単一分子の非線形力学の研究の新展開につながるだけでなく,より根源的な分子の挙動である分子の立体配座変化や化学反応の機構が解明できるという。

今後,材料科学から生命科学に至るまで,これまで理論計算でのみしか伺いしれなかったさまざまな科学現象の研究への応用が期待されるとしている。

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