愛媛大学の研究グループは,キラル分光法のひとつである振動円偏光二色性分光法(VCD法)の開拓を行なった結果,ゲル化にともない,VCDシグナルが増大する系を見出した(ニュースリリース)。
キラル分光法の一つである振動円偏光二色性分光法(VCD法)は,赤外領域の円二色性を検出方法であり,ほとんどすべての分子に対して適用できることが特長となる。しかし,シグナル強度が非常に小さいために,数時間の測定が必要であり,これまで主に安定な溶液中の分子への適用に限られてきた。
研究グループは今回,原子・分子スケールでのミクロなキラリティがマクロなキラリティ構造(超分子キラリティ)をどのように構築するかに焦点を当て,低分子量ゲル化剤がゲル化にともない,VCDシグナルの増大することを見出し,付随した新しい手法の開拓(固体VCD法,時間ステップVCD 法など)を行なってきた成果をまとめた。
その結果,ミクロなキラル分子から超分子キラリティのキラル増幅をリアルタイムに検出することにも成功した。主に以下の3点に関してのVCD法の新しい知見や潮流を発表している。
(1)ゾルーゲル転移におけるVCDシグナルの増大
(2)溶液中における金属イオンとの配位によるVCDシグナルの増大
(3)無機層状化合物中のキラル分子間の相互作用による立体選択的なVCDシグナルの増大
また研究グループは,時間分解及び空間分解能をもつ多次元VCD法への挑戦を行なっているとしている。