筑波大ら,偽造不能なマイクロ光認証を開発

筑波大学,立教大学,物質・材料研究機構,独ライプニッツ光技術研究所の研究グループは,偽造不可能なマイクロ光認証デバイスを開発した(ニュースリリース)。

ICカードなどの機器を安全に利用するためには,偽造や複製が困難な認証方法が求められる。現在普及している簡便な認証方法としては,バーコードやQRコードのように,0/1(ゼロイチ)の情報のパターンを読み取るものがほとんど。もし,それぞれの0/1情報の中にさらなる情報を埋め込むことができれば,偽造や複製が困難で,より安全性の高い認証デバイスが構築できる。

実際,今日の半導体チップ市場においては,チップが実際にその工場で製造されたものかどうかを判定するために,チップ上の各トランジスタの性能のばらつきをあらかじめ記録しておく,物理複製困難関数(Physical Unclonable Function:PUF)という手法が用いられている。

2つの芳香族有機基がエテン(エチレン)の1,2位にそれぞれ結合した化合物であるジアリールエテンは,開環・閉環構造での色や,変化に必要な光の波長を変化させることができる。

紫外光/可視光照射により,発光のオン/オフを切り替えることができるため,今回,研究グループは,このジアリールエテン分子の自己組織化によりマイクロ球体光共振器を作製し,球体内部への光閉じ込めによる 「ささやきの回廊(Whispering Gallery Mode:WGM)共鳴発光」のスイッチングを実現した。

この分子を用いて作製したマイクロ半球体アレーは,紫外光/可視光照射による書き込み(発光オン)/消去(発光オフ)のメモリー機能を持ち,さらに,各ピクセルがWGMによる固有のスペクトル(スペクトル指紋)を示す。この構造のばらつきによる光共振器特性の違いをPUFとして利用した。

これらの特長から,このデバイスは各ピクセルが(1)マイクロサイズの2次元情報(QRコード)による認証,(2)スペクトルによる認証,の2段階認証を行なうことができ,偽造や複製が実質的に不可能な光認証デバイスとして機能することを実証した。

さらに,このような発光ピクセルを高密度に集積することで,書き込み可能な光メモリーとしての応用も期待できるとしている。

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