大日本印刷(DNP)は,第5世代通信規格(5G)に対応した「透明アンテナフィルム」を開発した(ニュースリリース)。
この製品は,透明なフィルム上に,目に見えないほどの金属配線を超微細なメッシュ(網目)状に形成したもので,優れた透明性に特長があり,5G対応製品の透明表面材にアンテナを設置でき,アンテナ設置場所に余裕のなかったモバイル機器や窓ガラスにおいて,視認性を損なうことがない。
5Gの高速大容量のデータ通信にはミリ波帯の電波(波長1~10mm,周波数30~300GHz)が用いられるが,従来のマイクロ波と比較しミリ波は近傍製品の影響を受けやすくアンテナ設置場所の自由度が低いという問題があった。また,ミリ波は電波の直進性が強く,従来以上の通信環境を確保するにはアンテナの設置数を増やす必要性もあった。
こうした課題に対して同社は,視認されない超微細金属メッシュ配線を開発し,透明アンテナフィルムを実現した。これにより,5G対応のさまざまな製品に意匠性を損なうことなくアンテナ機能を追加できる為,モバイル機器のみならず基地局やIoT機器等への自由なアンテナ設置が可能になる。
「透明アンテナフィルム」の主な概要は以下の通り。
・5G対応アンテナとして室内の壁や天井,大型モニター,窓ガラスなどの建造物,車体のガラス等にも貼付することで,さまざまな空間で5G電波を受信しやすくすることが可能。
・金属材料の選択と形状設計により,メッシュを視認できない線幅にしても,アンテナに適したシート抵抗(2.5Ω/□)(オームスクエア)を実現できるため,5G対応製品のアンテナとして充分な性能を発揮するという。
同社は,印刷技術と情報処理の強みを活かし,この「透明アンテナフィルム」や放熱部品「ベーパーチャンバー」などの5G向け電子部品と,IoTの情報セキュリティを高めるプラットフォームなどを掛け合わせて,5Gが実現する快適な情報社会を支えるソリューションを提供する。
さらに,5Gを活用し,場所や時間を問わず臨場感のある体験を提供するVR・ARコンテンツや4K・8K映像配信,安全な自動運転や遠隔医療などにも取り組んでいくという。
また同社は,今回開発した「透明アンテナフィルム」をさまざまな企業へ提供し,2022年度に量産を開始し2025年度に年間100億円の売上を目指すとしている。