OIST,大型励起原子を光ファイバー付近に生成

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,リュードベリ原子と呼ばれる,通常は見られない大型の励起原子をナノスケールの光ファイバー付近に生成した(ニュースリリース)。

リュードベリ原子は電場と磁場に対して非常に影響を受けやすいことから,長年にわたり物理学者が関心を向けてきた。この超高感度原子は,光ナノファイバーと組み合わせて使用すれば,新タイプの拡張可能な量子デバイスに役立つ可能性がある。しかし一方で,リュードベリ原子を制御するのは難しかった。

実験にあたっては,磁気光学トラップと呼ばれるデバイスを使用し,ルビジウム(Rb)原子のクラスターを捕獲した。原子の温度を約120μケルビン,すなわち絶対零度を少し超える程度にまで温度を下げたのち,ナノファイバーを原子のクラウドの中に通した。

次に,ナノファイバーを通過する波長482nmの光ビームを使用し,ルビジウム原子をよりエネルギーの高いリュードベリ状態に励起した。 ナノファイバー表面の周りに形成されたリュードベリ原子は,通常よりもサイズが大きい原子。原子内の電子がエネルギーを得ると,原子核から遠くに移動してより大きな原子を生成する。この通常にはない大型の原子サイズにより,周囲の環境および他のリュードベリ原子の存在に対しての感度が高まる。

研究グループは,光ナノファイバーのほんのnmという範囲内にリュードベリ原子を置き,原子とナノファイバー内を移動する光との相互作用を増幅させた。リュードベリ原子は,通常にはない性質を持っているため,磁気光学トラップを脱出するが,この原子の損失が,光のパワーと波長にどのように依存するかを調べることにより,研究グループはリュードベリ原子の挙動の一部を理解することができた。

研究グループによると,光ナノファイバーを伝わる光でリュードベリ原子を励起させて制御することにより,量子通信の方法への道が開かれるとともに,量子計算への漸進的な進歩の可能性が出てきた。さらに,材料や創薬の分野で革命をもたらしたり,より安全な量子通信を提供してくれる可能性があるという。

今後は,リュードベリ原子の特性を光ナノファイバーと組み合わせてさらに研究したいと考え,そしてさらに将来的には,このシステムの可能性と限界を探求するため,よりサイズの大きいリュードベリ原子を探求していくとしている。

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