東大,二光子イメージングでマウスが見た画像再現

東京大学の研究グループは,様々な画像に対するマウス一次視覚野の神経細胞の活動を網羅的に記録し,その活動からマウスが見ていた画像を再現する手法を開発した(ニュースリリース)。

ある瞬間の画像情報は少数の神経細胞によって処理されていると考えられている。脳はどのようにして少数かつ不安定な神経活動を用いて安定した情報を
表現し,外界からの視覚情報を処理しているのかを明らかにすることは,脳科学の分野において重要な問題の一つとなる。

この研究では,マウスに数百から数千枚の画像を見せながら,二光子カルシウムイメージングで,マウスの一次視覚野の1mm以下の範囲にある数百個の脳細胞の活動を網羅的に記録し,その活動にどのような情報が含まれているのかを調べたところ,従来の報告と同様に,個々の画像に対して数%程度の神経細胞が活動していた。

続いて,この少数の細胞の活動にどのような画像情報が含まれているのかを調べるために,神経活動からマウスが見ていた画像を再現する解析手法を開発した。この解析手法はヒトのfMRIを用いた研究などで用いられてきた。今回この手法を応用し,二光子イメージングのデータからの画像の再現に初めて成功した。

この手法を用いて解析を行なったところ,一つ一つの画像はごく少数(約20個)の細胞の活動から再現できた。このことから,少数の脳細胞の活動に複雑な画像の情報が含まれていることがわかった。

また,同じ画像を繰り返し提示すると,応答する細胞やその活動の大きさは毎回変動していた。この神経活動の不安定さにも関わらず,この活動から比較的安定して同じような画像を再現できた。このことから,一見不安定に見える脳細胞の活動にも,安定した画像の情報が含まれていることがわかった。

なぜ少数の脳細胞の不安定な活動に,複雑な画像の情報が安定に含まれているのかについて,まず,少ない細胞で複雑な画像情報を表現するために,個々の細胞が持つ情報が大きく異なっていることがわかった。

次に,各細胞が持つ情報はお互いに少しずつ補い合っていて,ある細胞が活動しなくても別の細胞たちが活動することにより情報が補完され,安定した情報表現が可能になっていることを明らかにした。

これらの結果は,長年提唱されてきた少数の細胞の活動に情報が表現されているというスパースコーディングを実証するものとなる。また,不安定な神経活動の中に安定した情報を表現するといった,新規の情報処理様式を提唱する結果だという。

研究グループは,今回明らかにした脳の情報処理様式は,将来的に優れた人工知能アルゴリズムの開発につながるとしている。

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