島津製作所は2月5日,航空機などの製造・整備に向けた検査用の超音波光探傷装置「MIV-500」を発売した(ニュースリリース)。
この装置は,超音波が伝搬する様子を撮像する独自の非破壊検査技術(超音波光探傷)により,航空機の機体や部品など表面付近の異常を可視化・データ化する。塗装や塗膜の除去作業を必要とせず,検査作業の効率化を図るとともに,目視や打音といった検査員の技能に頼った工程に「最新技術による理化学検査」や「整備記録のデジタル管理」という新たな価値を提案するとしている。
「超音波光探傷」とは,超音波と光を利用した非破壊検査技術。検査対象物体の表面に超音波を伝わらせ,振動によって発生した表面のわずかな変化をレーザー照明およびカメラで検知し,亀裂や剥離,空洞などの内部欠陥が存在すると,超音波の伝搬の乱れとして検出する。
従来からある「超音波探傷」は対象物体の深さ方向に沿って欠陥を検知するのに対し,この超音波光探傷は,目視やカメラ撮影と同様の視野で欠陥を観察できるため,欠陥の位置や形状の確認に秀でているという。
例えば部材の接着剥離など,打音検査で探していた接合部の異常を可視化できる。従来の検査装置では難しかった塗膜の浮きや塗膜下の母材の異常の検知にも長けているという。
また,塗膜下の異常を観察できるため,目視検査で必要な塗膜除去・再塗装を省ける。測定(撮影・解析)時間は1回当たり約20秒と短く,作業時間の削減が可能となる。さらに,検査結果を画像データとして記録できる。こうした検査データは経時観察を含む様々な分析にも活用できる。
同社はこれまで,航空機向けに空気調和装置や飛行制御装置,コックピット用ディスプレー装置といった装備品を製造してきた。新製品は,こうした航空機分野での知見を活かしつつ,同社が得意とする分析計測分野の技術によるもの。
近年の航空機数の増加に伴い,世界各地で運航を支える整備人員の不足が起きつつあるという。この製品を皮切りに,同社は航空機用部品メーカーや整備会社での省人化と品質向上に資する製品を開発・販売していく。
また,超音波光探傷技術は,自動車や船舶,鉄道などモビリティ分野での製造・整備への応用が可能で,同社はこの技術などを用いた検査装置ブランド「MAIVIS」のシリーズ展開も計画している。