阪大ら,天体からのガンマ線発生機構を解明

大阪大学,チェコ共和国ELI-Beamlines,チェコ共和国科学アカデミー,伊ピサ大学,伊国立光学研究所,露科学アカデミー,露プロコロフ基礎物理学研究所の研究グループは,宇宙の天体が強烈な粒子や光を放つ仕組みを,理論的に明らかにした(ニュースリリース)。

宇宙には,強烈な光や粒子を放つ,不思議な天体が数多く存在する。たとえば,「かに星雲」は爆発した巨大な星の残骸(超新星残骸)だが,高いエネルギーの光(ガンマ線)を放つことが知られている。近年になって,ガンマ線が生み出される仕組みに,相対論的な磁気リコネクション現象が深くかかわっていることが予想され,謎の解明が待たれていた。

この研究では,プラズマの中で,逆方向を向く磁場同士がぶつかって繋ぎ変わる現象(磁気リコネクション現象)に注目し,極めて速く動く電子がさらに加速されることを発見した。

磁気リコネクション現象は,オーロラや太陽のフレアでも重要な役割を担っているが,この研究が解明したのは,さらに激しい現象となる。プラズマの中に磁場があると,電子といった電荷を持つ粒子は,磁場に纏わり付いて,一緒に動く(磁場の凍結)。

しかし,極めて高温の状態では,相対論効果により,電子が重たくなることで,この磁場の凍結が破れる領域(非断熱領域:Non-adiabatic Region)が生まれる。その結果,1cmあたり300億V(30GV)の電圧が生じ,光の速さの99%におよぶ高速の電子ジェットが放たれることを,3次元理論シミュレーションで明らかにした。

この研究で明らかにした高速の電子ジェットのエネルギーは,ガンマ線に変えられて放出される。この研究の成果は,かに星雲といった超新星残骸からガンマ線が放たれる仕組みや,ブラックホールが起源と考えられる,さらに強力な爆発的ガンマ線(ガンマ線バースト)など,未知の宇宙現象の解明につながるという。

また,この研究では,2本の強いレーザーを用いれば,実験的に現象を再現できることを明らかにした。研究グループは実験に必要な高強度レーザー施設として,ELI-Beamlinesと大阪大学のレーザー施設を保有しており,今後も宇宙現象の理解のみならず,新しい粒子発生装置の開発につながる研究に取り組んでいくとしている。

その他関連ニュース

  • 東大ら,ガンマ線と可視光偏光の同時観測に成功 2023年11月24日
  • 京産大,彗星のアンモニア生成分子の光解離寿命算出 2023年11月22日
  • 京産大ら,可視光・小型補償光学装置を開発 2023年11月16日
  • 東大ら,初期の宇宙で酸素が増加した痕跡を発見 2023年11月10日
  • JAXA,X線観測でブラックホール周辺の物理構造解明 2023年11月09日
  • 東大,宇宙複屈折に重力レンズを取り入れた理論計算 2023年11月06日
  • 公大ら,すばる望遠鏡で空気シャワーの可視化に成功 2023年10月13日
  • 産総研ら,リュウグウの観測/測定のデータ差を解明 2023年09月28日