東北大,電気分解によるグラフェン合成に成功

東北大学の研究グループは,亜臨界水反応場を適用することで,電気分解によるグラフェン合成に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

グラフェン合成過程において,活性化障壁を超えて反応を促進するために,熱化学反応のみを利用するCVD法(化学的気相合成法)や SiC(シリコンカーバイド)分解法では,通常,高温の熱エネルギーが必要となる。

電気化学反応が重畳される水熱電解法では,熱エネルギーに加えて電気エネルギーも併せて利用できるため,本質的に散逸ロスの大きい熱エネルギー消費を抑えることができる。

今までの研究例では電気分解により,アモルファスカーボンなどの結晶性の低い炭素材料が合成できることは知られていたが,炭素の結晶性ナノシートであるグラフェンの合成は報告されていなかった。

アモルファスカーボンの堆積を抑えつつ,目的の結晶性ナノカーボンを比較的低温で成長させるために,研究グループは,亜臨界水を溶媒に用いた電解合成法に着目した。

その結果,常温常圧水中ではアモルファスカーボンしか堆積しなかったのに対し,300℃程度の亜臨界水中で酢酸を電気分解することにより,白金陰極表面にグラフェンが合成できることを世界で初めて見出し,電気分解(水熱電解)法によりグラフェンが合成できる手法が発見されたことで,グラフェン合成に新たな選択肢が加わることになった。

使用した装置は,電極導入端子付き圧力容器,直流電源で主に構成されている。酢酸水溶液を封入し,昇温(300℃),昇圧(10-12MPa)した容器中の電極間に3.5Vの電圧を印加することで,白金陰極表面にグラフェンを堆積させることが出来る。

更に研究グループは,この水熱電解法によるグラフェンの合成メカニズムについて解析し,酢酸以外にも蟻酸,エタノール,メタノールからも同様のグラフェン合成が出来ることを明らかとしている。

グラフェンの成長中,陰極表面では,酢酸や溶媒の水の還元により水素が生じる。このことは,このプロセスが,有機物中の炭素を高付加価値なナノカーボンの形態で固定化しつつ,水素を取り出す,グラフェン-水素のコプロダクションプロセスとして成立することを示唆している。

将来的に,太陽電池や風力発電等の再生可能電力を利用して,バイオマス資源や天然ガスなどから,クリーンエネルギーである水素と高機能性カーボンであるグラフェンを同時製造できれば,二酸化炭素の固定化や水素エネルギーの低コスト化につながり,サーキュラーエコノミー実現と持続可能な開発目標(SDGs)達成に大きく貢献するとしている。

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