三菱電機ら,土木インフラ計画の作成支援技術を開発

三菱電機,東京工業大学,鹿児島大学の研究グループは,道路・鉄道管理者の意図に沿った,土木インフラの長期にわたる維持管理計画が容易に作成できる「土木インフラ維持管理計画の作成支援技術」を開発した(ニュースリリース)。

近年,高度経済成長期に建設された国内の多くの土木インフラが一斉に老朽化し,更新時期を迎えている。2014年には国土交通省が自治体や道路会社に対して,橋梁やトンネルなどの5年に1回の目視による定期点検を義務付け,壊れてから補修する事後保全から,壊れる前にこまめに補修する予防保全への転換を推進している。

予防保全には長期にわたる維持管理計画の作成が必要だが,管理対象となる土木インフラの数は膨大で,現在のような人手による適切な計画の作成は容易ではない。

研究グループは,橋梁を対象として,劣化進行のモデル化と多様な維持管理目的の指標化を行ない,最適化問題として解くことで,維持管理目的指標の重みづけに応じた補修時期や補修コストを算出し,維持管理計画案として提示できる技術を開発した。また,さまざまな視点で指標の重みづけを変更できるようにしたため,管理者の意図に沿った計画が作成できるようになったという。

開発の特長は以下の通り。
1.損傷の種類に着目した「劣化進行モデル」により,インフラごとに最適な補修時期を予測
・ひび割れやコンクリートの剥離,鉄筋露出などの損傷の種類に着目し,劣化の進行速度を予測する独自の「劣化進行モデル」を考案
・健全度が同じ土木インフラから早期に劣化するインフラを見つけ,最適補修時期を予測

2.「劣化・コストモデル」により,予防保全に必要なコストと効果を見える化
・損傷の種類と度合いに応じて補修コストを算出する「補修コストモデル」を考案
・「劣化進行モデル」を統合した「劣化・コストモデル」により,劣化の進行に応じた補修コストの見積もりが可能
・劣化の進行に応じた補修コストをもとに,予防保全に必要なコストと効果を見える化

3.維持管理目的指標を重みづけし,管理者が優先する目的を的確に計画に反映
・多様な維持管理目的を指標化し,「劣化・コストモデル」と組み合わせた最適化問題として解くことにより,管理者の多様な維持管理目的を考慮した複数の維持管理計画案を作成
・維持管理目的に応じた指標の重みづけにより,優先する目的を的確に反映し,管理者の意図に沿った維持管理計画を作成

なお研究グループは今後,鹿児島県薩摩川内市にて橋梁を対象とした実証を進め,モデルの精度向上を図るという。また,開発の対象を他の地域や他の種類のインフラ維持管理にも広げていく予定としている。

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