出光興産と東レは,熱活性化遅延蛍光(TADF)材料と赤色蛍光材料を用いた有機EL(OLED)素子を開発し,実用化領域に近い,かつ世界最高レベルの発光効率46cd/Aを達成した(ニュースリリース)。
有機ELディスプレーは赤色,緑色,青色の発光素子からなり,現在,赤色発光素子には主にリン光発光材料が使用されている。
リン光発光材料は,電力を光に100%変換することができ,発光効率を向上させることができるが,素材にレアメタルを使用しているため高コストであり,また,発光スペクトル幅が広く色純度が低いことが課題だった。
これに対し,近年,TADF材料が注目されている。TADF材料を活用した技術は,リン光発光材料と同様に電力を光に100%変換できることに加え,発光スペクトル幅の狭い蛍光材料を組み合わせることで高色純度を達成する特長を有する。また,素材にレアメタルを使用しないため,材料コスト削減を図ることができる。
両社は,2017年9月26日の有機EL材料に関する技術提携に関する合意以来,互いが保有する有機EL材料,技術,知見等を活用し,新規材料開発で協力してきた。
今回,両社で開発したTADF材料を活用した赤色有機EL素子が,現在主流の赤色リン光素子と同等レベルに迫
る結果を得た。これは,出光興産が発光効率と寿命を両立させることができる新規のTADF材料を,東レが従来に比べて発光スペクトル幅の狭い新規の高色純度の赤色蛍光材料を,それぞれ開発に成功した結果だという。
両社は今回の成果が新たな技術の早期実用化に向けた大きな進歩であり,有機ELディスプレーの低コスト化や省電力化,および広色域化に寄与するものだとして,今後,モバイルやテレビ用途などへの採用を目指すとしている。