矢野経済研究所は,中国のADAS(先進運転支援システム)/自動運転用センサー市場の調査を実施し,ADAS/自動運転システムに搭載されているセンサーの市場概況,技術動向,個別メーカーの事業戦略を明らかにし,2030年までのADAS/自動運転用センサーを種類別に予測した(ニュースリリース)。
それによると,中国におけるADAS(先進運転支援システム)/自動運転用センサーの2019年の市場規模は2,529億4,000万円に達する見込み。センサーの種類別の内訳は、レーダ680億4,000万円、カメラ1,561億円、超音波センサ288億円である(レーダーは77GHzミリ波レーダーと24GHz準ミリ波レーダー,カメラはセンシングカメラとリア/サラウンドビューカメラを含む)。
レーダーは前方検知用に搭載される77GHz長距離レーダーに加え,後方側面の左右に搭載される短距離レーダーの需要も伸びているという(短距離レーダは77GHz,24GHzの両方が使われている)。短距離レーダはBSD(後方死角検知システム)やDOW(ドアオープン警報)などで使われており,後方からの二輪車のすり抜け事故の多い中国ではDOWのニーズが高い。
カメラはADASで使われている前方認識用センシングカメラ,リア/サラウンドビューカメラなどの搭載数量が拡大しており,中国現地メーカーの製品もリアビューカメラを中心に増えている。超音波センサーは衝突警報や駐車支援システム向けに需要が伸びており,用途に合わせて車両(自家用車・商用車)一台あたり4~12個の超音波センサーが搭載される。
2018年1月の「智能自動車創新発展戦略」では2020年に中~高レベルのICV(インテリジェントコネクテッドビークル)の市販化の実現,2035年には中国の標準的なICVを世界的にすると発表している。自動運転は中国においても大きな経済的および社会的利益があることから,自動車業界の発展促進のため,一連の施策と規制を導入している。
さらに2018年12月の「ICV産業発展行動計画」においては,V2X(車車間通信 路車間通信)に5Gセルラー通信を採用することを明文化し,車両のV2Xの普及目標についても示している。5G-V2Xについては2022年以降に実用化するとしており,2022年の北京冬季五輪において5G-V2Xのデモンストレーションを計画している。
2030年における中国のADAS/自動運転用センサーの市場規模は1兆8,371億8,000万円に成長すると予測する。センサの種類別の内訳は,レーダー4,843億5,000万円,カメラ6,154億1,000万円,超音波センサー759億2,000万円,LiDARは6,615億円となっている。
最も市場規模が大きいのがLiDARであり,2025年以降レベル3以上の自動運転システムでの需要が拡大するとみる。中国政府は「中国製造2025」でICV(インテリジェントコネクテッドビークル)の開発を国家戦略まで引き上げることを発表し,2025年以降V2X(車車間通信 路車間通信)によるレベル4以上のICVの実現を目指している。
このため,ICVの実証試験区に指定されている北京や上海などの都市部において,レベル4の自動運転システムの搭載が活発化し,LiDAR出荷数量も拡大すると予測している。