情報通信研究機構(NICT)と日本電気(NEC)は共同で,顔認証システムでの特徴データの伝送と,特徴点などの認証用参照データの保存を,量子暗号と(k,n)閾値秘密分散(秘密分散)を用いて構築し,認証時の高い秘匿性・可用性を持ったシステムの開発と実証に成功した(ニュースリリース)。
研究グループは今回,顔認証時の特徴データ伝送を量子暗号で秘匿化するとともに,認証時の参照データを秘密分散で保管するシステムを開発した。そして,NICTの量子暗号ネットワークTokyo QKD Network上にこのシステムを実装・実証することに成功した。
Tokyo QKD Networkは,東京都心にある2か所にも量子暗号ネットワークを展開しており,それらの拠点にはネットワークオペレーションセンター(NOC)が配置されている。NOCでは,データサーバのサービスも提供しており,様々なユーザのデータが保存されている。
日本代表選手が所属する様々なスポーツ分野のナショナルチームは,2013年から国際競技大会に出場する選手のパフォーマンス向上を目的とした,選手のスポーツ選手用電子カルテや映像解析にこのネットワーク上のサーバを利用している。
今回,ナショナルチームの協力を得た研究グループはこのシステムを利用し,このサーバへのアクセスを物理的に管理する試験利用を10月から開始した。
都内にあるNOCのサーバ室に設置されたカメラ映像から特徴データが抽出され,その特徴データは量子暗号で暗号化され,NICT本部(小金井)の信頼できるサーバ室に設置されている顔認証サーバに送られ,認証が実施される。
なお,この顔認証サーバに保存されている認証用参照データは,Tokyo QKD Network上に秘密分散でバックアップを行なっており,顔認証サーバ等に不具合が発生しても,システムを迅速かつ安全に復旧することができるという。
両者は今後,各スポーツ競技団体のユーザ端末がサーバにアクセスする際の顔認証のログインによるユーザ認証やデータサーバとの通信にも量子暗号の技術を取り入れ,スポーツ選手用電子カルテの確認や映像解析の際に物・人の安全で強固な認証,安全なデータ伝送及び安全なデータ保存技術の試験利用を,2019年度末を目途に開始する予定。
これらの技術検証は完了しており,これらの技術について,ハンドフリーでの本人認証が必要とされるスマート製造現場や医療現場での導入を目指し,より利便性の高いシステムの実現を目指した研究開発を進めていくとしている。