情報通信研究機構(NICT)は,次世代光ファイバーと大規模光ノードの実験ネットワークで,世界で初めて,毎秒1Pb/sの光パスのスイッチング実験に成功した(ニュースリリース)。
NICTはこれまで,産学と連携し1本の光ファイバーに複数の光通信路(コア)を収めたマルチコア光ファイバー等の次世代光ファイバーを開発し,伝送容量の世界記録を更新してきた。
マルチコア光ファイバーの伝送容量としては,ペタビット級の研究成果が報告されているが,実際の光ネットワークには,光ファイバー以外にも,光ノードや光増幅器といった光ファイバーと接続する通信機器が必要で,これらの大容量化も不可欠となる。
今回NICTは,次世代光ファイバーを利用した大容量通信を目指し,低損失なMEMSスイッチ素子を利用した大規模光ノードを新たに開発し,これまで開発した3種類の次世代光ファイバーを用い,現在の光基幹ネットワークの運用方法に即した4パターンの光パススイッチング実験を実施した。
4パターンのスイッチング実験の概要は,以下の通り。
パターン | スイッチ容量 (毎秒) |
実験の概要 | 利用イメージ | 利用した光ファイバ |
---|---|---|---|---|
1 | 1ペタ | 世界記録容量の 光パスのスイッチング |
大都市間の ネットワーク |
22コア |
2 | 1ペタ | 運用系と予備系のスイッチング (冗長構成を構築) |
障害発生時におけるネットワーク | 22コア |
3 | 346テラ 148テラ |
1種類の光パスから 容量の異なる2種類の光パスへの分岐 |
大都市間の ネットワーク |
22コア、7コア、シングルコア3モード |
4 | 10テラ | 現在運用されている容量程度の 光パスのスイッチング |
都市間の ネットワーク |
22コア |
その結果,世界記録となる,8K放送の1,000万チャンネル分に相当する毎秒1Pb/s光パスのスイッチングや,障害発生時における運用系パスから予備系パスへのスイッチングなどに成功した。
次世代光ファイバーと,今回開発したノードを利用することで,現在の光ネットワークの通信容量を100倍以上更新するペタビット級の光ネットワークを構築することができるという。
NICTは今後,産学官連携による光増幅器を利用した長距離伝送システムの研究も進め,大容量光ネットワークの実用化を目指して,研究開発に取り組むとしている。