矢野経済研究所は,車載用ディスプレー世界市場を調査し,純正品・市販品別の出荷数量,部位別やインチ別の市場動向,価格動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,中国での自動車販売台数の伸び悩みが懸念されたものの,2018年の車載用ディスプレー世界市場(純正品および市販品を含む,メーカー出荷数量ベース)は,前年比105.2%の1億6,646万枚だった。
これは,CID向け,Cluster向けの車載用ディスプレー出荷数量がそれほど落ち込まなかったことも要因として挙げられる。2019年上期までの関連各社の出荷量及び下期の見込数量を考慮し,2019年の車載用ディスプレー世界市場を前年比100.5%の1億6,725万枚と予測する。ただ,引き続き2019年も中国自動車産業は低迷し,市況は楽観視できず,出荷数量の前年割れの可能性も考えられるという。
注目トピックとして,AM-OLEDパネルは,2017年第3四半期から韓国のSDC(サムスンディスプレイ)より車載用ディスプレーとしての一部出荷がスタートし,2018年にはある程度の出荷実績が出始めた。また,2019年末よりLGD(LGディスプレイ)からAM-OLEDパネルの出荷がスタートするとみる。
これは,欧州OEMメーカーが一部のモデル向けでLGDのPOLED(プラスチック基板のOLED)を採用するもので,2019年末より出荷が開始される予定であるものの,出荷が本格化していくのは2020年以降と推測する。
その他にも2020年以降,車載用ディスプレー量産品採用に向けて提案中の案件が複数あり,高級車種を中心に徐々に車載用AM-OLEDパネル採用が拡大していくとみる。
ただ,高価なパネルであるがゆえに,LCD-TFTを上回る採用のメリット提示ができていない現状ではポジティブな成長シナリオは画きにくい。将来的には,曲面などフレキシブルな機能を活かせる用途向け(ドアやaピラー付近など)など,メリットを活かせる新規用途向けで採用され,市場拡大していくとみている。
2020年以降,車載用ディスプレー世界出荷数量は年率4%以上のプラス成長を遂げる見込み。中国での自動車販売台数など楽観視できない材料も存在するものの,中東など新興国地域向けの車載用ディスプレーの需要増,2021年以降のマルチディスプレー化が市場を牽引していき,2023年の車載用ディスプレー世界市場(メーカー出荷数量ベース)は2億198万枚に成長と予測する。
また,新たな需要として期待されるHUD,Rearview Mirror,Side Mirror向け車載用ディスプレーは急成長を遂げる見通しだが,高級車種を中心としたオプション品としての搭載が中心となり,これらのディスプレーが搭載可能なのは新型車かつ高級車種に限定されるとしている。