青学ら,レーザーでトポロジカル相転移を実現

青山学院大学,東京大学,米テキサス大学,スペイン・マドリード自治大学,イタリア・ピサ大学の研究グループは,原子層半導体・二硫化モリブデンへのレーザー光照射による二次元トポロジカル物質の創製に成功した(ニュースリリース)。

トポロジカル物質は従来物質(金属や半導体など)の枠に入らない新奇物質として,その3次元構造での研究が活発に行なわれている。

トポロジカル物質内部は,スピン軌道相互作用によりエネルギーギャップが開き絶縁体になっているが,表面ではこのギャップが閉じ金属的伝導が発生する。

しかもこの表面を流れる伝導電子スピンはトポロジカルに保護され,物質固有の散乱要因(欠陥や不純物)の影響を受けず一定の抵抗値(量子抵抗25.8KΩ)を持つため,量子コンピュータなど次世代デバイス創製のキーファクターとして注目を集めている。

一方で低次元トポロジカル物質の研究例は,半導体量子井戸が中心だった。二次元トポロジカル物質では,試料中央部は絶縁体だが試料端(エッジ)は金属伝導を持ち,保護された反平行の自転モーメントを持つ2つの電子スピンが,この一次元エッジ経路に沿って反対向きに走行する。

ここ数年原子層半導体物質が二次元トポロジカル絶縁体になる可能性が報告され,話題を集めていた。しかしその作製法は極めて複雑で制御性の悪いものだった。

今回の研究では,レーザー光照射で発生する熱が層面内を素早く一様に伝搬することで半導体相がトポロジカル相に転移することを発見した。半導体との界面の照射部エッジに沿って流れる電子スピンが量子抵抗値を創出することを検出し,さらにその磁場・温度依存性,走査型トンネル分光,理論計算などから,これを裏付けたという。

研究グループは,これにより原子層半導体物質上へレーザー光照射で自在にトポロジカル相をパターニングすることが可能になり,エッジスピン流を活用した次世代電子スピン素子・回路の創製が期待できるとしている。

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