独バイロイト大学,高輝度光科学研究センター,英ブリストル大学,ドイツ電子シンクロトロン,中国の北京高圧科学研究センター,東北大学,広島大学,岡山大学の研究グループは,大型放射光施設SPring-8の放射光X線を利用した高温高圧下その場観察実験(BL04B1)と熱化学計算を組み合わせて,上部マントルの主要鉱物リングウッダイトから下部マントル主要構成鉱物のブリッジマナイトとフェロペリクレースへの分解反応(ポストスピネル転移)を精密に決定した(ニュースリリース)。
この相転移は,地球の上部・下部マントルの境界となる660km不連続を引き起こすと考えられてきたが,これまでの相転移実験では,圧力決定精度が0.2~0.5万気圧だったので,ポストスピネル転移の圧力幅が本当に0.1万気圧以下なのかどうかを検証することが出来ず,2km以下であると報告されている660km不連続の極端な薄さを説明することが出来なかった。
今回,独自に開発した世界最高精度の高温高圧実験と熱化学計算により,ポストスピネル転移の圧力幅が地震学的観測で検出できる厚みよりさらに一桁薄いことを示し,660km不連続がこの相転移で説明できることを明らかにした。
具体的には,独自に開発した圧力発生技術を駆使して,従来よりも試料にX線を通す広い空間を確保し,試料圧力を随時細かく制御することによって,0.05万気圧以上の圧力精度で相平衡関係を決定することを可能にした。
研究グループは,この研究成果が全地球マントルがパイロライト組成であるという説が有力であることを明らかにし,マントル対流の新しい検出方法を提案すると共に,この手法を用いれば,これまで検出不能であった地球マントルのダイナミクスを明らかにできるとしている。