東芝は,駅の改札や空港の保安検査場など公共スペースにおいて通行者の流れを止めない新たな警備支援サービス向けに,ミリ波レーダーを照射することで,衣服に隠れた危険物であっても高精細に可視化する電波イメージング技術を開発した(ニュースリリース)。
近年,不特定多数の人が集まる公共スペースで刃物・銃・爆発物を用いたテロや無差別殺人事件が相次いでいる。高度なセキュリティが要求される空港の保安検査場などでは,検知器と検査員による検査が行なわれているが,人件費や設備導入費用などのコストが高く,多くの人が利用する場所で通行の妨げとなるため利便性の低下が避けられない。このため,公共スペースにおいて利便性を損なうことなくテロリストや不審者を検知して警備を支援する高性能・低コストの検査システムの実現が望まれている。
そこで同社は,自動運転や衝突防止で高性能化・低コスト化が進む車載ミリ波レーダーに着目した。ミリ波は衣服は透過するが,銃やナイフで使用される金属は反射し,爆薬などの粉体は吸収する。この性質を利用して,高精細にイメージングする技術を開発した。この技術は,面状に配置したアンテナがミリ波レーダーによる反射信号を捉えてイメージング画像を生成する。
一方で,対象物以外の余分な虚像が映らない高精細なイメージング画像を生成するには,照射するミリ波の半波長間隔(約2mm程度)で測定することが必要となるため,アンテナ設置数やデータ量が膨大になるという課題がある。
同社は,互いに素となる半波長以上の間隔で測定した2つのイメージング結果を合成することで虚像を打ち消しあう特性を新たに発見し,半波長間隔で測定した場合の約1/7(約15%)の測定数で高精細なイメージング画像を生成する方式を開発した。
測定数の減少に伴い,アンテナやセンサーの設置数やメモリ量を削減できるためシステム導入時の負担を抑えることが可能となる。同社は今回の技術の実証実験を行ない,衣服に隠れたモデルガンを高精細に可視化できることを確認したという。
同社は,今回の技術により,駅や空港,ショッピングセンターなどの公共スペースにおいて,立ち止まり検査を必要としないウォークスルー方式で危険物の検知が可能となる警備システムを構築することができ,今後,2020年以降の鉄道会社やアミューズメントパークと連携した実証実験を目指して研究開発を継続するとしている。